スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ4 『不良少年』から『HEART OF RAINBOW』


チェッカーズの音楽とその時代
の読書メモ第4回。
前回。
gkmond.hatenadiary.jp

『あの娘とスキャンダル』の次は『俺たちのロカビリーナイト』。スージーさんの曰く「とても地味な印象の一曲」。この頃(85年夏)は阪神が躍進していて「チェッカーズよりタイガース」だったと書いてあり、「あー、そういえば」とか思った。しかし、と話は展開する。

それから30数年の時が過ぎた今、この曲の歌詞をしげしげと眺めると、また新たな発見がある。一言で言えば「無国籍オールディーズの完成形」。

で、普段歌詞カードなんか見ないで音だけ聴いているおれとしては次のくだりにちょっと噴いた。

驚くべきことに歌詞カードでは「不良少年」と書いて「ロカビリー」と読ませている。これは「本気」と書いて「マジ」と読ませるよりも、相当に無理やりだと思うのだが、不良少年の物語と設定することで、チェッカーズの魅力の源である「久留米のヤンキー性」が表出する。

 後半部分についてはそういう見方もある(結構スージーさんの曲評価に顔を出す「ヤンキー性」なんだけど、おれはあんまりポイントと思えないんだよね)くらいなんだが、この前半には笑ってしまった。「♪あの頃はみんなロッカビリーと呼ばれ、てたね」みたいに聞こえてて、ロカビリーって人間? とは思っていたんだけど、不良少年のルビだったとは(知ってたはずなんだけど、忘れてた)。
 思わず、『当て字・当て読み漢字表現辞典』(amazon)を引っ張りだして引いてみた。あった。辞典すげえ。さらにそれで思い出したおれが記憶する限りチェッカーズの歌詞で最大に無茶なルビだと思った「連弾ぶ」(←一発で読めますか?)も引いたら、そっちも載ってた。この辞典やりおる。その項目の横にもまだロカビリーナイト出てきて三度驚いた。

【絶叫(さけ)ぶ】(歌詞)涙ロカビリー好きだと絶叫(さけ)び〔チェッカーズ「俺たちのロカビリーナイト」(売野雅勇)1985〕
【連弾(さけ)ぶ】(歌詞)ロックン・ロールのピアノが連弾(さけ)ぶよ せつないねと〔チェッカーズ「OH!! POPSTAR」(売野雅勇)1986〕

 それはともかく、スージーさんは最終的に「当時この曲を意識的に遠ざけたことを、今となって少し後悔する」と仰有るのだけど、おれはこれ、いつ聴いても「マジか、これが一位取ったのか」って思っちゃうんだよねえ。いや、流れのなかで出て来るぶんにはいいんだけどさ、『今夜の涙は最高』とかと一緒で、これだけが入ったレコード買う気になるか? くらいに思うんだわ。7×10に入っていたライブの映像は好きだけど。
 もう一個、意外な発見があったのは補論ってところ。

85年8月12日、チェッカーズ西武球場(当時)でコンサートを開催。その様子を収めたDVDが『THE CHECKERS CHRONICLE 1985 Ⅰ Typhoon' TOUR』。この日に起きた大惨事が日航機墜落事故。いくつかの情報を総合すると、墜落寸前の飛行機は、西武球場の近くを飛行していると見られている。

DVDはこれ。

 さーて次は『HEART of RAINBOW』12インチシングル作品。よくわかんねえけど、マキシシングルみたいなもんか?(読んでる人若かったらマキシシングルって単語ももしかして死語?)尾崎豊の『卒業』も12インチシングルだったんだって。曲の特徴は「フミヤのボーカルがシングルトラックなのである」。シングルトラックってなあに? という疑問のある方、『チェッカーズの音楽とその時代』を読みましょう。技術的な話も書いてあるけど、個人的に面白かったのは、

そして当時は、グリコ・アーモンドチョコレートのCMソングとして聴いて「可愛い曲だなぁ」と思い、「サザンオールスターズのニューアルバム『KAMAKURA』のついでとして買っておこうか」くらいの意識だった。

グリコ・アーモンドチョコレートのCMは、今でも動画サイトで見ることができる。メンバーのつくしん坊のような髪型が異常に可愛い。

 ここを読んだ人のどれくらいが立ち止まったかはわからないんだけど、思いだしてほしい。読書メモ第2回の『ギザギザハート』のコメント部分、

「ハードロック少年」としては、「可愛い」と同調するのは、さすがに、色んな意味ではばかられる。

 ハードロック少年は二年足らず(発売日-発売日なら丸2年だけど、同級生からの口コミ来るまでのタイムラグ考えれば2年足らずである)でチェッカーズのまえに陥落していたのだ。「可愛い」からシングル買っちゃうまでに。チェッカーズすげえわあ。

 それはさておき、実はこの曲のレビューが本書通していちばん不満だったりする。意見が合わないとかいう以前の問題で不満だったりする。ちょっとウィキペディアの『HEART of RAINBOW』の項目を見てほしい。

「HEART OF RAINBOW ~愛の虹を渡って~/ブルー・パシフィック」(ハート オブ レインボウ ~あいのにじをわたって~/ブルー・パシフィック)は、1985年9月21日にリリースされたチェッカーズの8枚目のシングル(12インチシングル)。

解説
両A面シングル扱いで、「HEART OF RAINBOW ~愛の虹を渡って~」はグリコアーモンドチョコレートのCMソング、「ブルー・パシフィック」はTDKカセットテープのCMソングであった。
企画シングルとして発売された為、ランキング番組などで披露される事はなかった。

 両A面なのに、なんで『ブルー・パシフィック』無視すんのさあ。むっちゃ格好いい曲じゃんよー。

追記:読書メモ完結。全十三回。以下目次

スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ1 タイトルのメッセージを妄想してみた - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ2 『ギザギザ』から『星屑』まで - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ3 『ジュリア』と『スキャンダル』あるいは「キラキラ」と「チャラチャラ」 - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ4 『不良少年』から『HEART OF RAINBOW』 - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ5『神様ヘルプ!』から第1期まとめまで - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ6 NANA I Love you, SAYONARA - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ7『WANDERER』から『ONE NIGHT GIGOLO』(あるいはみなさんのおかげです)まで。 - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ8『Jim & Janeの伝説』から『Room』まで - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ9 『Cherie』と『Friends and Dream』 - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ10 『運命』から『夜明けのブレス』まで - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ11 『さよならをもう一度』と『Love'91』 - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ12 『ミセスマーメイド』から『今夜の涙は最高』まで - U´Å`U
スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ13最終回 - U´Å`U

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