Directions to Servantsの訳語、今昔。

 ジョナサン・スウィフト『奴婢訓』が本棚から出てきたので薄いし読んでみっかとパラパラめくったところ、なんかヒロシのネタかってくらい、段落同士が独立していて、実態を知っていたら笑えるんだろうたぶんと思いつつ、今、日本で、これを読む意味は? となり、放り出すことにしたのだけども、目次を見ていたら、「別当」なる項目があり、いったいそりゃなんのこと? という疑問解消のためにいくつか検索、ついでに2015年の平凡社ライブラリー版なんかも覗いて訳語の比較なんかしてみた。せっかくやったので記録。
 まず、原文の目次は以下。

"Directions to the Butler"
"Directions to the Footman"
"Directions to the Coachman"
"Directions to the Groom"
"Directions to the House Steward and Land Steward"
"Directions to the Porter"
"Directions to the Chambermaid"
"Directions to the Waitingmaid"
"Directions to the Housemaid"
"Directions to the Dairymaid"
"Directions to the Children's Maid"
"Directions to the Nurse"
"Directions to the Laundress"
"Directions to the Housekeeper"
"Directions to the Tutoress, or Governess"

https://en.wikipedia.org/wiki/Directions_to_Servants

 で、おれがパラパラしていた岩波文庫の『奴婢訓』(深町弘三訳 1950年)(今入手できるバージョンはこちら)目次に並んだ訳語は以下。

・召使頭(バトラア)
・料理人(コック)
・従僕
・馭者
別当
・家屋並びに土地管理人
・玄関番
・小間使
・腰元
・女中
・乳搾り女
・子供附の女中
・乳母
・洗濯女
・女中頭
・家庭教師

 これに対して、平凡社ライブラリーの『召使心得(アマゾン)』(原田範行訳 2015年)の目次に並んだ訳語は以下。

・執事(バトラー)
・料理人(クック)
・従僕(フットマン)
・馭者(コーチマン)
・馬丁(グルーム)
・家屋管理人(ハウス・ステュワード)
・土地管理人(ランド・ステュワード)
・玄関番(ポーター)
・部屋係(チェインバー・メイド)
・侍女(ウェイティング・メイド)
・女中(ハウス・メイド)
・乳搾り女(デアリー・メイド)
・子供の世話係(チルドレンズ・メイド)
・乳母(ナース)
・洗濯女(ラウンドレス)
・女中頭(ハウス・キーパー)
・女家庭教師(ガヴァネス)

別当って馬丁のことなの? っつーことでコトバンク
kotobank.jp

 あった! ありましたよ!

⑬ (院の厩(うまや)の別当から転じて) 馬を飼育したり、乗馬の口取りをしたりする人。馬飼い。馬丁。

 1950年ごろは馬丁より別当のほうが通じやすかったのだろうか、それともちょっと古い感じを出したかったんだろうか。
 ただの記録なので、別にだからどうだということは特にない。