塚田穂高編著『徹底検証 日本の右傾化』の電子版がリリースされた。
紙版を読み、非常に興味深かった(21本集められた論文の多くは力作だったし、並べる順番も考えられていた)。
今読むという意味ではもちろん鈴木エイト「統一協会=勝共産連合――その右派運動の歴史と現在」が必読。安倍晋三元首相銃撃事件以降報じられるようになった話の6~7割がすでに論じられていることには素直に驚いた。藤田庄一「創価学会・公明党の自民党『内棲』化」も知らないことがあれこれ書いてあって勉強になった。
索引がないことだけが惜しいと思ったのだが、検索機能が使える電子版のリリースで問題は解決した。
と思ってさっそくサンプルをダウンロードしたら竹中佳彦「有権者の『右傾化』を検証する」は電子版未収録と目次にあった。ついこないだ紙で読んだとき有権者は保守化しているわけではなく、安倍首相の支持率が高いのは経済政策への評価があるからであり、現時点で有権者の意識が「右傾化」していると断定できる証拠はないという趣旨の同論文は単体で見ると微妙な気分が残った(「だったらなんで現状こんななんだ」と思うからね。要するに知りたいことの入り口にきたところで話が終わった感じした)ものの、全体のなかにはめるピースとしては面白かったのでちょっと残念。
この論文とその前の「自民党の右傾化」って論文の二つが導く結論は自民党も有権者も言うほど「右傾化」を示しちゃいないというものだったりする。
じゃあ、何が起きているの? という疑問が当然湧き、その疑問に答えていくのがそこからあとの諸論文という作りになっているので、問題提起パートに欠落が生じるのはもったいないなあ*1。
ということで論文数は一本減っている。が、値段は紙より1割くらい安い。そして検索機能がついた。
筑摩のまわしものでも執筆陣の誰かの知り合いでもないけど、この本は現状必読文献だと確信しているので、それぞれの興味にあったバージョンを選んで読むのが吉だと思う。
*1:紙では残ってるってことは電子化に際してあまりにもあまりな条件提示で執筆者が飲めなかったってこと? とか、今みたいな状況で読まれるのが面白くないってこと? みたいな勘ぐりもしてしまうし