カフカ 丘沢静也 訳 変身/掟の前で 他2編

変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)
カフカ 丘沢 静也

4334751369
光文社 2007-09-06
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「変身」以外を読んだ憶えがなかったので覗いてみることにして、「判決」「アカデミーで報告する」「掟の前で」の三つを読んだ。
「判決」では父親の一言によって世界が反転する感じが良かった。
「アカデミーで報告する」は人になった猿が自らの進化(の仕方がディックの某短篇っぽくて笑った。)を語るっつーことで露骨な寓話。
「掟の前で」は人になれなかった猿の話って所だろうか。
 あとがきがまた思い入れたっぷりで、白水社バージョンを批判するする。正直、他のバージョンを批判するという行為は、不毛だなあと思うのだけど、言わずにはいられなかったのだろう。ちなみに訳者は本書の翻訳方針をクラシックのピリオド奏法*1になぞらえている。白水社版は分かりやすさを目指して翻訳しており、そこがよくないといいたげだ。
「そんなもんはファッションカフカなんだよ!」
 という叫びが聞こえてくるようだ。個人的には色々なバージョンがあって良いと思うし、どれが優れているかの判断は読者に任せた方が良かったのではないかとも思う。しかしながら、白水社版と比較して絶対的に優れている点もある。値段だ。
 
 

*1:作曲された当時の演奏技法や演奏習慣で演奏することらしい。よく分からないけど。