ウィルキー・コリンズ 仮井三十訳『カインの遺産』

 ってなわけでepubにしたところで苦労したり作品情報入れるところでロイヤリティの設定条件に驚いたりしていたこれ、無事リリースにたどり着いた。

 エントリータイトルでわかるように、作者は『白衣の女』『月長石』なんかが有名なウィルキー・コリンズ。結構好きなので一度訳してみたかった。これを選んだ理由は今までに訳されたことがなさそうな作品のひとつだったのと、コリンズが生前最後に完成させた作品だったから。
 『毒婦の娘』の解説で佐々木徹が「後半失速気味だが、前半は極めて好調で楽しませてくれる」と書いているのが、自分に見つけられた唯一の作品評ってレベルで言及が少ない作ではあるけれど、訳している分には楽しかった。
 テーマは「道徳性は遺伝するのか」って問いで、物語は監獄を舞台に始まる。夫殺しで死刑宣告を受けた囚人が悔悛しないどうしようってところから評判のいい牧師が呼ばれる。囚人は牧師に悔悛してやってもいいけど条件があるって言い、自分の娘を養子にして欲しいと頼む。牧師はそれを引き受ける。さあこの子がどう育つでしょう、にあれこれの大映ドラマっぽい要素が加わるのだけど、贔屓の引き倒し的なことを言わせてもらえば、出揃った大映ドラマな要素を津原泰水が『赤い竪琴』でやったみたいなずらし処理かけようとしていて興味深かった(とは言え、その手つきは津原みたいに洗練されたものではないため「後半失速」という読みが成り立っちゃうんだけど、そこに作者の願いみたいなものがあるんだというふうに訳者のおれは読んだ)。
 このへんもうちょっと書いてみたい気もするけれどリリース初日からネタバレ記事書いてどうするっていう気もするのでこれくらいにしておく。
 とりあえずサンプル読んで気に入ったら続きも読んでもらえたらと思う。お値段安くしてないので、キンドル・アンリミテッド登録してる人がきまぐれ起こしてくれると嬉しいなあ(もちろん購入してくれる人がいたら大喜びしますが)。