安部公房『方舟さくら丸』

方舟さくら丸
安部 公房

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新潮社 1990-10
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「方舟さくら丸」(安部公房著)読了。核戦争に備えて、地下採石場跡の巨大な洞窟をシェルターに改造した主人公が、ともに核戦争後の世界を生き延びる仲間を捜そうと、街へ繰り出し、洞窟へ他人を招き入れ、妄想の共有を試みたものの、理想としていた暮らしとはほど遠く、わずか一日にして洞窟から逃げ出す話。ありとあらゆる状況を想定しながら、その実、どこにもいやしない理想的隣人モデルで状況設定していたものだから、現実の他者によってことごとく台無しに。そのあたりの間抜けさ加減が楽しい。が、常に三人以上が出ずっぱりで、誰が喋っているのか掴みきれないところも散見された。自分のウンコを食って生きる完全自閉昆虫ユープケッチャのイメージが面白い。どこにも存在しない昆虫に自らを投影した主人公は失敗を約束されている。七面倒くさいことを散々考えていながら、現実においては女の尻を触ることしか考えていない主人公に乾杯。それなりに面白かった。