『寝台超特急ひかり殺人事件』

寝台超特急ひかり殺人事件 (講談社文庫)
辻 真先

4061841572
講談社 1988-02
売り上げランキング : 1477174

Amazonで詳しく見る
by G-ToolsISBN:4061841572

推理作家・牧薩次は、ファンから贈られた"新幹線2階建て寝台"の切符で旅へ。が、車中で奇妙な事件が続発。その謎のカギは、ファンから預っていた"小説"に暗示されていた!?そこで牧の婚約者でスーパー・ウーマンの可能キリコも登場して…。著者お得意の"創案列車"と多層構造の異色推理長編。

 親本は昭和五十九年十二月発行の講談社ノベルス。スーパーとポテトの「殺人事件」シリーズ第九弾*1。前作「急行エトロフ殺人事件(感想)」同様、架空の二階建て寝台特急を舞台に起こる殺人事件。
 予告編めいた引用をするならここ。

 この世の中には、なにかをしたから、ではなくて、なにもしなかったからこそ、糾弾されるべき場合がありますのよ。

 ところで本作の文庫版を手に入れた方は、本編より先に解説を読むことは絶対に避けるべき。この解説(武蔵野次郎)は最低です。
 ちょっとウケたのは、克郎の夢が「サウナのはしご」であったところ。さりげなくサウナ好きをアピールしているのは、別の作品の伏線だったりする*2。他にも瓜生慎の文章が作中に引用されているのも楽しい。一瞬、「三陸鉄道死神が宿る(感想)」のときに取材していた記事かと思ったが、あくまでテーマは寝台超特急「ひかり」だったので、関係はないようだけど。そうそう、この本では「死体が私を追いかける(感想)」に出てきた鬼山が出演している。もう警察を辞め、電車の警備員になっていた。「一見落着!」に出てきた湊マホも再登場。スターにはなれなかったらしい。
 いつも通りに手の込んだ作品で面白かった。読んでもらいたいがどこに行けば手にはいるのかは謎である。

*1:合本・青春殺人事件解説による。

*2:もちろん妄想です。