『山陰ドン行に死す』

山陰ドン行に死す (徳間文庫)
辻 真先

4195693187
徳間書店 1991-04
売り上げランキング : 1476099

Amazonで詳しく見る
by G-Toolsisbn:4195693187

 トラベルライター瓜生慎シリーズ第7弾。

美しい風紋を描く鳥取砂丘で少女の死体が発見された。旅行誌「鉄路」の取材で山陰本線のドン行「山陰」に乗ることになっていたトラベル・ライターの瓜生慎は、新妻真由子からの連絡で、その少女はひょっとして自分の妹かもしれないと知らされる。仰天した慎は、早速「山陰」に乗り込み、鳥取に向かったが豪雪のため倉吉でストップ。駅頭に佇む慎の前に、色気たっぷりの芸者が…。長篇トラベル・ミステリ。

 こんな話で親本のトクマノベルス版は85年の2月に出た。「迷犬ルパンの蒸発(感想)」でも出てきた高速バス「ドリーム号」がまた出ているので、この頃話題だったのかなあなどと思う。
 その他、ビデオカラオケが売れ出した記述なんかにも時代を感じた。その割に本作のネタはついこの間うち話題になった話でもあったりする。なんなのかは読んでくれ*1
 青酸カリで死んだ人からアーモンド臭がするのは胃液の中の塩酸と青酸カリが混合して発生する青酸ガスのせいであることを知る。原因なんぞ考えたこともなかった。だから毒の量が少ないとほとんど臭わないんだそうである。へえ。
 しかし、そんなトリビアより何より、本作においてもっとも目玉は被害者の少女(先に謝っておこう、キーワードで飛んできた人ごめんなさい、ここにはあなたの求める情報はありません)、冒頭で死体となって現れる少女の名前は小倉優子。ポエムなんかを書いている不思議少女ちゃんである。なぜ辻真先がこの名前を選んだのかは謎だが、いま読めばこそ、思わず吹き出してしまった。明かされる真相は、要素の無駄遣いを避けるためなんじゃないの? という強引さもあったし、こうじゃなくても良いような気もしたけれど、そこそこ面白かった。しかし読み終わったあと何が一番印象に残ったと言って小倉優子死すという部分だったことも否めない。

*1:いつもどおりどこに行けば購入できるかは分からない。