『ミステリーの社会学』(amazon)という本を読んでいたら、

もともと本格ミステリー自体が第一次大戦によって起こされた中産階級の知的・倫理的混迷の産物だった。大戦による大量死、革命、社会的混乱は古い倫理観をゆさぶり、どうしてこんなことになったのか、いったい誰がわるいのかがわからないという深い挫折感を、とくに知識層にもたらした。戦後のクロスワード・パズルと“メイヘム・パーヴァ*1派の大流行は彼らのそうした精神的外傷の代償作用だと言われる(Colin Watson,Snobbery with Violence,1971)

 なんだ、元ネタあったのか。ということで俺の中の笠井先生凄いよ度がツーランクダウン。元ネタの提示してたっけか? それともこれとは微妙に違う主張なんだったっけ。
・「5時46分」震災10年、各地で追悼行事http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050117it02.htm
 今日で十年です。朝起きて、テレビ点けて理解不能な映像が流れていたのはまだ憶えてます。95年はいろいろなことがあったわけですが、スタートはこっからだったなあ。このあとサリンからオウムフィーバーがあったり、エヴァブームが来たり、野茂がメジャーリーガーになったりしたんですよね。ウィンドウズ95が発売されたのもこの年だ。考えてみれば凄い一年だったんだなあ。俺は毎日遊び惚けていたけど。

*1:よく分からないが八墓村みたいなところのことをこういうらしい。そういうところを舞台に採った作品を書く人たちをまとめているみたい。

松本清張『点と線』

点と線 (新潮文庫)
松本 清張

4101109184
新潮社 1971-05-25
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by G-Toolsisbn:4101109184
 迷犬ルパンスペシャルの下準備として『点と線』を読む。雑誌『旅』に昭和32(1957)年2月号から33年1月号まで連載された、松本清張推理小説処女作。
 アリバイ崩しの名作で、「“社会派”的な新風をもたらし、空前の推理小説ブームを呼んだ秀作」らしい。のだが、それほど面白くないぞ。リアルな人間とか言うけれど、別に他のと変わらないじゃん。賢くないだけで。
 何度も何度も頭が硬くなってるとか、呆けたとかいう描写があって、最後に脳梗塞かなんかで倒れる伏線だったら凄いよなと思いつつ読み進めたんだけど、やっぱりそんなわきゃないのである。死んでくれれば衝撃だったのに。
 リアルな状況設定などと言われるらしいが、リアルというより単に地味なだけで、最初から最後までふーーーーんって感じ。
 面白かったのはむしろ、「寒冷前線」が新しい言葉として紹介されていたり、横須賀線が東京始発でしかも地上にあったりしたことで、思わず調べてみたところ、地下駅建設されたのは昭和47年*1で、横須賀線総武快速線が直通運転するようになったのは昭和55(1980)年*2のことだった。
 ちなみにチラッっと出てくる喫茶店レバンテは今もある(ホームページhttp://r.gnavi.co.jp/g911600/)。「牡蛎料理をはじめとしたバリエーションに富んだ本格的な料理は文豪・著名人に愛され、松本清張「点と線」など数々の小説の舞台にもなっています。」と書いてあるんだけど、本当にチラッとしか出てきていない。もしかして刑事の通った喫茶店が実はレバンテだったのか?
 あと鎌倉在住の人間としては、「江の電を大仏前で降りた。」という描写が引っかかってならない。大仏前は江ノ電バスの停留所で電車は通ってません。
 ところで改版の方は解説平野謙のままなんですかね。この解説推理小説の解説としては犯罪に近いと思うんだけど。
 そういえば作品中、「湘南線」という電車に触れられていて、なんのことやらよく分からなかったので父親に聞いてみたところ、当時は東海道線をそう呼んでいたそうな。忘れないようにメモしておこう。
 あー読み直したら、不当に批判的な気もしてきた。これの影響を受けた作品の影響を受けた作品の影響を受けた作品の影響を受けた作品をあれこれ知らないうちに読んでいるんだろうからなあ。薄味に感じるのも当然だよな。考えてみれば。