『織田作之助 青空文庫で読めない短編全部盛り』出します

我ながらタイトルがまんますぎる気もするけれど、閃いたときに気に入ってしまったので。
明日リリースになる予定。

Amazonに書いた説明は以下。

『定本織田作之助全集』(全八巻)を主な底本とし、青空文庫未収録の短編小説43本を1冊にまとめた。本書と青空文庫でオダサクの短編小説はほぼ網羅できることになる。

 なんでこれやろうと思ったかといえば、マイク・モラスキーの『闇市』っていうアンソロジーAmazon)をパラパラめくっていたらそのなかに織田作之助の「訪問客」という短編があり、解説を見ても初出がわからなかったから青空文庫へ飛んだら、公開されている作品のなかにこれがなかったから。それまで大体の作品は青空で読めるようになっているんだろうと勝手に思い込んでいたのだけど、公開されているファイルが71本もあるのに、作家別作品リストを見ると、作業中の作品も40本くらいあるではないか。だったら落ち穂拾い的にキンドルで読めるようにしておくか、ってなふうに考えが転がった。戯曲とか評論とかは取り上げず短編小説だけにしたのは、自分のなかで織田作之助が短編作家というイメージだったから。
 で、全集の第一巻から青空文庫の作品リストと付き合わせ、公開されてないやつを入力していった。全集八冊のうち小説が収められているのは七冊で青空文庫で公開されていない短編作品は四十一本だった。これに加えて先日リリースした『合駒富士』(Amazon)をはじめとする長編小説にも青空未公開作品が残っているわけだけども、そっちは手をつけなかった。
 全集を「主な」底本にって書いたのは、もちろん全集出たずっとあとになって「続 夫婦善哉」が発見されたという話を覚えていたからで、これは岩波文庫を底本にした。それから「社楽」という短編が落語の「大山詣り」に似てるなあ、なんか影響関係あるのかなあって検索したひょうしに運よく斎藤理生の『織田作之助新資料「俄法師」とその周辺』(PDF)にぶつかり、「俄法師」の存在を知ることができた。ので、この論文で紹介してくれている本文の仮名遣いをほかの作品と統一して収録した。ほかに同じ著者の『織田作之助『人情噺』論』(PDF)、『織田作之助夫婦善哉』の「形式」』(PDF)も面白かった(「当時の織田の創作姿勢を「抵抗」という言葉で括ることは、実態から離れてしまう危険を伴う。」ってとこは、結構な数一気読みした自分の印象とも合致していて、んだんだと頷いた。)が、これは脱線。
 で、自分は織田作之助にめっぽう詳しいというわけではもちろんなくて、四半世紀くらい昔にちくまの短編集(これ→Amazon)で初めて読んで、収録作「蛍」(青空文庫)の冒頭、

 登勢とせは一人娘である。弟や妹のないのが寂さびしく、生んでくださいとせがんでも、そのたび母の耳を赧あかくさせながら、何年かたち十四歳に母は五十一で思いがけず姙みごもった。母はまた赧くなり、そして女の子を生んだがその代り母はとられた。すぐ乳母うばを雇い入れたところ、おりから乳母はかぜけがあり、それがうつったのか赤児は生れて十日目に死んだ。父親は傷心のあまりそれから半年たたぬうちになくなった。

 に、「一段落で三人も死んだ!」とびっくりし、以来ぽんぽん人が死ぬ、びゅんびゅん時間が進む作品を書く人ってなイメージを持ってたまにつまみ食いをしてきただけだったから、「続 夫婦善哉」収録し、「俄法師」は拾ったが、全集から洩れてる作品がまだあるのかないのか見当もつかず、オッズ的には「ある」のほうが有利そうだったので、「ほぼ網羅」と作品紹介欄に書いたのだけど、ファイルをAmazonに提出してから今日までのわずか数日のあいだに高松俊男『発掘追跡大阪近代文学の興亡』(Amazon)って本に「節約合戦」なる未見の作品が言及されていて、「ほぼ」つけといてよかったあなど思った。本文どっかに転がってないかと検索してみたが見つからなかった。まだそういうの、ありそうなので、あくまで「ほぼ網羅」。
 作品の位置づけその他周辺情報が欲しければ岩波でも新潮でもKADOKAWAでも解説付いた作品(集)出してるからそっちを当たってもらえばと思う。本書はあくまで青空文庫に入ってない作品を眺めたい人ターゲット。ご興味あれば是非。
 あと最後に、「青空文庫で読めない」はあくまでも作成時点の話で、今日段階は間違ってないけど一年後二年後には青空文庫で読める作品が結構混じっちゃうかもしれない。将来的に公開になった作品をあとで削るかどうかはこれから考える。