村でいちばんの首吊りの木 (C・NOVELS)
辻 真先
中央公論社 1994-02
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Amazonで詳しく見る by G-ToolsISBN:4125002711
「村でいちばんの首吊りの木」を読んだ。表題作は辻真先大人向け第一弾にして唯一の*1映画化作品*2。発表は「小説推理」昭和54(1979)年7月号。もともとは「旅路 村でいちばんの首吊りの木」というタイトルで、新書版になったときに改題。親本は著者三冊目のハードカバー*3。同時収録作品は「街でいちばんの幸福な家族」「島でいちばんの泣き砂の浜」。
田舎の村に住む母と東京で受験勉強に励む次男が、長男の関わったとされる殺人事件について書簡で語り合う表題作。一見幸せな家族の内情を日記と独白で描いた「街でいちばんの幸福な家族」。様々な無生物*4たちの一人称で事件の顛末を綴った「島でいちばんの泣き砂の浜」それぞれ語りに一工夫なされていて面白かった。不満は「街でいちばんの幸福な家族」の一文目に脱字があること*5と、短編だから当たり前だけど短いということか。特に「島でいちばんの泣き砂の浜」は絶対もうひとひねりあると思っていたから肩すかしを食った気分になった。その点表題作のラストはなるほどと感心もし、文章が良い感じに盛り上がってもいて、大満足だった。