迷犬ルパンの犬疑
辻 真先
光文社 1985-06
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迷犬ルパンシリーズ第5弾。今回の舞台は懐かしや筑波万博。しかもルパンに殺人の疑いが掛かっちゃう。今読むと「予告された『電波男』への異議申し立て」的な筋立てで興味深い。しかしそんなことより何より次の件りが凄い。
「それに、朝日さんの名前はマサヨシよ」
な、なんだってー!! 前作まで「セイギ」ってルビが振られてじゃないか! あまりにもふざけすぎって意見でもあったのかなあ。それにしてもシリーズ途中に主役クラスの名前が変わるなんてビックリです。
それ以外でも今作における作者のトリックはここまで読んだシリーズでは最高峰。驚いちゃったよ。
ほか楽しかったのはゲストにシレーヌが登場すること。ええ、デビルマンのシレーヌです。著作権は大丈夫なのか? 解説を書いている永井豪の言葉を引けば、
“シレーヌ”のネーミングは辻さんによるものでした。辻さんの手によるシナリオが先にできていて、そこには“シレーヌ”という名の、怪鳥をイメージした悪魔が書かれていました。僕はそれを読んでから、キャラクター・デザインをしたのです。そして自分でもこのキャラのデザインが気に入り、漫画の『デビルマン』にも重要な役割で登場させました。(中略)
辻さんと僕とで創造した美しき悪魔が、こんなに素晴らしい形で復活してくれたことが、うれしくてたまりません。
ということなので、問題はなさそう。
風俗史料として見るなら、やはり万博にはトラブルがつきものなのか、筑波万博では取材時と発刊時で入場方法に変更のあったパビリオンがあって、描写と現実に齟齬を来している旨が、最後に書かれていた。いくつかのパビリオンは作中でも言及されていて、当時の雰囲気が良く伝わってくる。考えてみれば、自分が筑波という地名を知ったのは、この万博がきっかけだったなあ。
2013/06/13追記 キンドル版が出ていた。確認時の価格は630円。
迷犬ルパンの犬疑 (光文社文庫)
辻 真先
光文社 2005-12-15
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