紺碧(スカイブルー)は殺しの色 (徳間文庫)
辻 真先
徳間書店 1986-08
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79年に出版された「離島ツアー殺人事件」を改題した*1もの。もともとは75年度の乱歩賞に応募した作品らしい*2。あらすじはこんな。
劇画原作者・大日方徹は、人気劇画家の城友也と沖縄の神島を訪れた。この島には今なお祖神信仰が色濃く残り、人々は大司という巫女を中心にパーント神を崇めていた。この島に突然殺人が起った。本土資本の手先となって土地買収に狂奔していた伊波可奈江が殺されたのだ。下着姿の彼女の死体の傍には一つの木彫りの面、ユーモラスでグロテスクな笑いを浮べたパーントの呪いの面が落ちていた。長篇ミステリー。
よくできた推理ものだと思ったが、それ以上に興味深かったのは、「蟻巣」の前身であるような店「美枝」の存在*3だったり、大日方という語り手と後にケイブン社から出る文庫シリーズの主人公大日向*4との関係だったりした。
そんな部分を置いても、本作はいろいろな意味で辻真先のエッセンスが凝縮されており、古本屋で見かけたときは是非是非手にとってもらいたいと思った。大変面白かった。
追記:ラストの方で永島慎二の作品に触れた部分がある。
漫画に一生を賭けて悔いない男の出る作品があってさ。話の中でそいつはね、こういうんだ。
『たかがマンガじゃありませんか。ねえ?』
漫画と格闘してさ、青春をすりへらした主人公がいうんだよ。若者の、照れとシラケといじらしさをないまぜにして……わかる? 先生。『たかが』の裏に隠れてる、涙や汗の分量を
案外、自分を語っているんじゃないかなあと思った。