うみねこのなく頃に

 どう考えでもこんなことしてる場合ではないと思いつつ、後半4エピソードを消化。どう考えてもこんなことをしてる場合ではないと思いつつ、感想エントリ執筆中。だっておもろかったんだもん!

 かれこれ五年も前、「ひぐらし」に大喜びしていたのを思い出した。あっちはラスト2エピソードが好みに合わず空転感を抱えるはめに陥った。全体のラスト予想がエピソード6のラストで使われてしまったため、無駄に期待が高くなったのがいけなかったんだろう。
 そんなこともあり、今回の「うみねこ」は一本目が出たところでの期待度は低かった。やってみた結果、相当どうでも良かったから続きはやらないつもりだった。魔女の噂を背景に無人島の洋館で繰り広げられる連続殺人事件ですがか。たぶんみんなそれぞれに悲しみを抱えちゃっているわけですよね、きっとと思ったくらいしか憶えていない。

 全部やるきっかけになったのは、――ファンのみなさま、および作者さまごめんなさい――友達と軽い賭をしたときに、ちょっとした罰ゲームをつけようという話になって、あまり深刻じゃないからという理由で「うみねこ読破」が設定された。2006年のことである。結果は2010年に出るその賭、負けたのは私、っつーことで2008年段階で敗色濃厚だったから、まずエピソード2〜4を終わらせておいた。この段階では、罰ゲームは罰ゲームだった。特にエピソード2最初、譲治と紗音のデートシーンの会話は、なんの拷問だろうと。これからやる人に言っておくと、あそこは我慢だ。ふり返っても糞シーンだけど我慢。全体的に見ても、世界観が「ひぐらし」と続いているというか、焼き直しに見えたりして、事件の考察するレベルでの戦人とベアトリーチェのやり取り(そういえばこれって書籍版も出ているみたいだけど、赤とか青とかどう処理しているんだろう)は、そこそこ楽しめたけれども、まどろっこしさが先に立ち、あまり面白いとも思えなかった。キャラがどんどん増えていってとても憶えきれないし。印象に残っているのは「うーうー」の理由くらい。

 で、昨年末後半を始めた。

 そしたら急に面白くなってきたんだ、これが。
 新たな探偵の登場。窮地に陥る魔女幻想、おどろくばかりに張り巡らされていた伏線。台詞がくどいことも気にならない大伽藍が目の前に立ち上がりだした。ミステリーということになっているので、中身に立ち入れないのが残念だけど、この作り込みは呆れるほど念が入っている。うん、呆れたよ。
正気じゃない。

 構成が狂ったレベルで作られていることももちろんなのだが、やっていて強く感じたのはBGMの素晴らしさ。ことに盛り上げるところでかかる奴はこっちの気分を昂揚させて、字だけ読んでいたら鼻白むような台詞を受け入れされる――いわば魔法として機能している。『ロッキー』のラストであのメロディー流れると突っ込みどころすべて忘れて感動するみたいな感じ。その意味でこれはあくまでもサウンド・ノベルなんだろう。音楽がなかったら40%は面白さが消えるはずだ。

 これは悪口じゃなくて、竜騎士07の回りに才能が結集したんだなという感嘆の表明ね。いいメロディーを作る人と、その曲の使いどころをわかっている人がいないとこういう効果は出ない。文が筋がって話はいっぱい出てるんだろうけど、俺は裏方スタッフにまず感心した。非常にしびれたOPムービー含めて。

 どきどきしたのはエピソード7の「答え合わせ」が始まったあたりで、「ひぐらし」はこっからがちょっと……という記憶もあり、心配でならなかったのだけれども、エピソード8はそんな杞憂を吹き飛ばすテンションで、このいつ終わるんだかわからない話を読んできて良かったと思える最終作となっていた。そうそう、俺が確認しただけでラストは2種類あった。フェイクじゃなかったのね、選択肢。
 人気投票を自分に入れろとのたまったあのキャラの啖呵は全編通じてもっとも印象に残ったかも(次点は戦人がEP5で見せた密室脱出トリックシーン)。ラスト直前の大バトルもまさかあんなもんが敵になるとは思わなかったので、相当笑ったというか、これは「朝のガスパール」か何かですかとむにゃむにゃ。

 とにもかくにも見直した感じ。欠点は元のままだけど、長所が伸びたというか、やっとこちらに長所が把握できたというか。正直、面白かった〜〜〜〜と読み終わるのは想定外。つーか、まだこのゲーム続けたいくらいだ。「翼」(だったっけ?)もやっちゃおうかな。

 と、「ひぐらし」EP6まで「すっげー」と驚嘆し、そっから3年くらいの「そうでもねー」という見くびり期間を経て、再び「すんげーー」へと「なく頃に」シリーズの評価が戻ってきたのだった。

 しかし次回作があったとして、今度こそやる時間は取れないっぽいのが残念でならない。時間が取れちゃったらそれはそれで別な意味残念なので、諦めようと思う。

 いやあ、面白かったあ。