『改訂・受験殺人事件』

改訂・受験殺人事件 (創元推理文庫)
辻 真先

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東京創元社 2004-08-11
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 スーパー・ポテトシリーズ第3弾。死体消失やら見立て殺人やら密室やら。「盗作・高校殺人事件感想)」の時もライトモチーフとしてあった(なかったっけ?)受験戦争への批判(いまも変わらぬ陳腐な批判)が声高に語られていて、何が原因なんだろうと訝しく思う。職場先に学歴だけが立派で使えない人が多かったのか? でも本人だって名古屋大学からNHKと、ここで批判対象になるような大人じゃないか。
 もちろんこうしたモチーフを採用すればウケは良いだろうし、戦争から三十年以上経った時代には、受験を戦争に例えることも説得力があったんだろうとは思うのだが、いかにも上滑りな感が否めず残念。

 しかけにはそれなりに驚かされたものの、これまで読んだ他の作品と較べるとイマイチ。そして解説は最低。こんな解説なら付いてなくて良い。それとも読み取れなかったネタが仕掛けられているのか? だとしたら済まぬことを言ったけど。でもそんな風にも思えなかったんだけど。

 その他色々読みながら思いついたこともあったはずなのだが、片っ端から忘れてしまった。あ、ひとつ思い出した。辻氏の小説に対する取り組み方は、テレビ業界からの越境という出自によって規定されているように思われる。このシリーズはどれも小説という媒体がなければ成立しない。その一方でキャラクターの作り方や批判のあり方にはテレビ的な分かりやすさが持ち込まれている。野沢尚作品にも感じたことだが、そうした「持ち込まれた荷物」が、軽い評価を呼び込んでいるのかも知れない。漠然と思ったことでしかないけれど。
2004年08月12日

追記:2016/03/01

キンドル版が出ていた。確認時の価格は590円。
改訂・受験殺人事件 (ポテトとスーパー) (創元推理文庫)
辻 真先

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東京創元社 2004-08-13
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