『正義の味方 仮面ライター』

正義の味方仮面ライター (ジョイ・ノベルス)
辻 真先

4408501387
実業之日本社 1989-12-05
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by G-Toolsisbn:4408501387

「正義の味方 仮面ライター」を読んだ。実業之日本社から出ていた週刊小説に掲載された短編を集めた短編集。あとがきによれば、

「テレビをつくっていたころが、懐かしくなってね。どうだろう、ひと昔前のヒット作にちなむ、というのは」
「それはけっこうですけどね、いまの読者は古いテレビのことなんて、知らないでしょう」
「それなら、中身をもじるんじゃなくて、題名だけ借りたお遊びミステリーは、どう?」
 そういうわけで、このシリーズができた。

 そうで、題名はどれもちょっと考えればオリジナルがなんなのか分かる程度に、ひねられている。各作品タイトルと初出は次の通り。
・正義の味方 仮面ライター(86年5月30日号原題「正義の見方 仮面ライター)
・餡蜜剣士(86年10月17日号)
・英と満(87年1月23日号)
・月光拉麺(87年6月12日号)
・辣腕トマム(88年8月19日号)
・老人の星(89年3月3日号)
・売るトラまん(89年7月7日号)
・宇宙銀行トマト(89年10月27日号)
 初出を見ると、昭和の終わりから平成まで半年に一編ずつくらいの平均速度で書き継がれたのが分かる。
 「仮面ライター」には近江由布子の旦那、中込がちょろっと出演。「辣腕トマム」は瓜生慎シリーズのヒロイン真由子の実家三ツ江通産が登場し、「老人の星」の舞台になっている鷹取市は「9枚の挑戦状」の舞台にもなっている。もしかしたら他にも関連作品を持っている部分があるかも知れないが、現時点では不明。(追記:12月26日「売るトラまん」に登場するウ○ール○○は、「株式学園の伝説」その他にも出てくるらしい。)
 ところで引用したあとがきを読むと、これがミステリーの連作のように感じられる。カバーには「逆転ユーモア・サスペンス」と書かれている。が、実際ミステリーやサスペンスでくくれる作品と言えば、せいぜい最初の三本目までで、あとはジャンル分けが微妙だ。最後の二本はSF風だったし、「辣腕トマム」は戦争の風刺もの、「老人の星」は辻版「報恩記」みたいなものだった。好みだったのは「餡蜜剣士」、「英と満」、「辣腕トマム」、「老人の星」。意外だったのは、割と下がかったネタが多かったところだろうか。全体の面白さは普通。
 あ、巻末の既刊紹介コーナーに「十津川警部の挑戦(上・下)」が。これたぶん、俺が生まれて初めて読み終えた大人向けの小説だったよ。今となっちゃカーセックスのシーンしか憶えてないけど。

 ……などと連日、辻真先読書記録ばかりつけているのだが、ご本人のサイトの掲示板にこんな記事が。

拙作が(書き下ろしを除いて)文庫化されるのはむつかしくなりました。瓜生慎のシリーズは、まだつづけられそうですが……。悲観的な言辞で恐縮ながら、ローマ字三部作も望み薄かな。『ピーター・パンの殺人』は文庫化が進みかけましたが中断。むつかしいものです。

 創元社さん! 「天使の殺人[完全版]」に近刊予告の帯つけたのに、そりゃあねえよ! って、二年経ってから言うのもなんだけどさ。でもどっかで「ただ遅れてるだけなんだ」と思いたかったんだ……えぐえぐ。
 ちなみに辻先生は、いま「春期限定いちごタルト事件」を読んでいるようです。映画は「雲のむこう、約束の場所」と「Mr.インクレディブル」が面白かったそうです。マンガでは「下弦の月」が良かったと仰っております。ぼくも読んだり見たりしてみようと思います。手元の辻作品全部読んだら←日々増殖中。
 とここらへん、辻真先のサイトを覗きつつ書いていたのだけど、今後の予定を見てみたらデジタル・ハリウッド大学http://www.dhw.co.jp/un/index.htmlの先生を四月からするそうです。紹介はこちらhttp://www.dhw.co.jp/un/professor/tsuji.html。この大学何? と思ったんだけど、卒業生に「スキージャンプ・ペアhttp://jp.shockwave.com/shortfilms/skijump/300k_asx9.htmlの作者がいるらしい。へえ。