得猪外明 へんな言葉の通になる ―豊かな日本語、オノマトペの世界

へんな言葉の通になる―豊かな日本語、オノマトペの世界 (祥伝社新書)
得猪 外明

4396110839
祥伝社 2007-08
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 本当かどうかは知らないが、日本語は擬音語・擬態語(まとめてオノマトペと呼ぶが、これはフランス語)が異常に発達した言語と言われているらしい。本書はそうした擬音語・擬態語の収集を趣味とするおっちゃんが、思いつくままに拾い集めたコレクションを披露する本である。これといってまとまりがあるわけでもないし、解説の半分くらいは資料の引き写しにも見えるのだが、いくつか楽しいエピソードなども拾ってくれているし、ところどころに挿入される「日本語って凄い」っつー根拠のない思いこみにしか見えない戯れ言をスルーできるなら、自分でそれら資料に当たる気力もない人には、そこそこに楽しいだろう。
 特に印象に残ったのは、鶏の鳴き声のくだり。
 鶏の鳴き声と言えば、コケコッコーだが、このコケコッコー、実は明治生まれ。それまでは日本各地で様々に聞き取られていた(興味のある人は本書か、出典になっている小学館の「日本国語辞典」参照。)が、コケコッコー自体はなかったらしい。それが明治も36年に至って、文部省が「国定尋常小学読本巻二」で「イソップ物語」と取り上げたのをきっかけに、統一されたのだそうだ。

ヲンドリハ(略)ハバタキヲシテ コケコッコート ナキマシタ

 本書に拠れば、これがコケコッコーの初出なんだとか。

 もうひとつ、印象に残ったエピソードは次の部分。昭和21年か22年の話。

 日本には母音が五つしかないと書いたが、かつて八つあったことは確かである。
 私の名前は小学校三年生まで「とくゐ」であったし、隣に座っている可愛い女の子の名前は「さとうまりゑ」ちゃんだった。これがある日突然、先生から「この字はなくなりました」と言われたときは、子供心にも悲しかったものである。

 それは寂しい気分になるだろうなあと思う以上に、そうか、国字改良って話はそんなレベルでの影響も与えるんだなあと、妙なほど実感が伝わってきた。