メアリー・シェリー フランケンシュタイン物語

フランケンシュタイン物語
メアリー・シェリー 池田 勝彦 Mary Shelley

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学生社
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 読み終わるまでどちらとも判別がつかなかったが、多少短いか? と思い、The Project Gutenberg 調べてみたら、リトルド版だった。にしては難しい単語が並ぶじゃないか、くそう。とはいえ学生社のアトム英文双書という、このシリーズは、ほぼすべての単語に注が振られているので、辞書を使わずに読めるのがありがたかった。
 原作にどれほど忠実なのかは分からないが、とりあえずフランケンシュタインの作った怪物の知性に驚愕。しかし過去ログを見ると、「批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義(感想)」で、俺は同じことに驚いていたらしい。忘れてた。それだけでなく、どう考えても怪物を作ったフランケンシュタインの方が理不尽なのも、また追跡するものとされるものが逆転して、人間が怪物を追い回す話になっているのにも、ちょっとずつ驚く。そして結局、フランケンシュタインは主人公らしい活躍をすることもなく舞台を去ったのにもビックリ。追跡する途中で、怪物から兎の差し入れをもらったりしていて、情けないったらありゃしない。原作でもこんな奴なんだろうか? まあ細かいニュアンスが消えるのがダイジェスト版の宿命なので、実際にはもっといろいろあるんだろうとは思うけど。
 ちなみに兎の差し入れが入るところのメッセージ(怪物は、フランケンシュタインが自分を見失わないように、あちこちに「こっちだよ」というメッセージを残しているのである。なんとも親切だ)はこんな感じ。

You will find near this place, if you follow not too tardily, a dead hare; eat and be refreshed. Come on, my enemy; we have yet to wrestle for our lives;

 食べて休め、戦いはこれからだ。とは、なんとも格好良い。これに対して、フランケンシュタインは、自分で怪物を作っておいて、それが醜くて仕方ないことに、命を吹き込む前には気づかないわ、怪物がもう一体パートナーを作ってくれたらいなくなってやると提案してきたのを受け入れながら、気が変わって約束を反故にするわ、おまけに見せ場もなくくたばるわ、もう最低。とは言いながら、怪物の方も、全然関係がないフランケンシュタインの周りの人間を無意味に殺したりしていて、ほとほと誰の視点に立てば良いのか分からなかった。
 原作もこんなだったら読まなくて良いかもなあ。ちなみにこの本は高校時代(だと思う)に高校生向けという煽りに騙されて買ったもので、当時はまるで歯が立たなかったのだった。とりあえず読み終わったので良かったなと。もうシリーズもなくなっているだろうと勝手に思っていたのだが、丸善に行ったらまだこの双書は売られているようだった。地味に息が長いと感心した。