入試合否「見かけ」で判断…神奈川・平塚の県立神田高

 神奈川県平塚市の県立神田高校(渕野辰雄校長)が2004、05、07年度に実施した入学試験で、学力テストなどの点数では合格圏内だったのに、服装や態度などから「生徒指導が困難」として、22人が不合格になっていたことがわかった。

 県教育委員会は、希望者を入学させるとし、他の県立高校についても調査する。

 県教委の発表によると、願書受付時や入試当日に、服装や髪形、態度を担当教員がメモにして提出。「つめが長い」「胸のボタンが開いている」「まゆをそっている」などの報告があった受験生の中から不合格者を決めていた。

 04年、05年度はいずれも6人、07年度は10人だった。07年度実施の前期試験では、内申書と面接の合計点が合格者57人中、16番だった受験生らが不合格となったという。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081028-OYT1T00579.htm?from=rss&ref=newsrss

 校長のコメントで動機は「先生方の生徒指導の負担軽減とまじめな子をとっていきたいという気持ちがあった。」ということ。まあ、ありそうな感じだ。 気になるのは前期内申書と面接の合計点が16番だったのに落ちた生徒がいたこと。面接の採点基準はどうなっているんだろう。「服装」とかそういう項目はなかったのか? たぶん学校の方は、今度から服装の配点を高くして「ちゃんと試験しました」って言うんじゃないかな。
 保存用にメモしておく。

追記:11/15続報記事が出ていた。
【神田高校問題】「校長先生を戻して」「服装で合否、正しい」保護者や生徒が嘆願書
 処分された校長が学校に残れるように嘆願運動が始まっているとか。というのも、

同校保護者らによると、以前の同校は校内に飲食物が散乱し、喫煙やいじめ、盗難などが絶えなかった。近隣の公民館やコンビニエンスストアなどには「神田高生の立ち入り禁止」の張り紙が出され、アルバイトを断られたり、バスに乗せてもらえなかったことも。

 というような状況だった同校を教頭だった渕野前校長と前任の校長が「まじめな生徒が下を向いて歩いているようではいけない」と具体的な対策を取り始め、地元の警察が「指導件数が減った」と舌を巻くほどの効果をあげていたからなのだとか。元記事を読んだときには、「楽したいから面倒をしょいこまないようにしましょう」ってのがバレた話だと思ってた。誤解だったようだ。もしかしたらこのエントリーを読んで「わかっていないくせに!」と腹を立てた人がいるかもしれない。ごめんなさい。
 にしても前校長が「全校生徒の顔と名前を覚えている」という話は本当なんだろうか。本当なら凄すぎる。

 で、俺はこの学校が次の入試から服装の件を明文化すんじゃねえのかと思っていたが、案外と意見は分かれているみたいで、

身なりや態度について、そもそも選考基準に明記すべきものなのか。同校関係者は「常識まで明文化を求めるのか…」と話す。

 と書かれていた。
 他にも、私立北星学園余市高校(北海道余市町)の幅口(はばぐち)和夫校長は

 「公表基準以外で不合格にしたことが問題視されているが、では面接で落としていればオーケーなのか。この問題をそんな話に矮小(わいしょう)化しない方がいい」

幅口校長は「渕野氏のやり方をいいとは言わないが、気持ちはよく分かる」とした上で「教育しやすい生徒だけを学校に入れ、あとは切る。高校のあり方としてそれでいいのかという問題が根底にある」と指摘する。

神奈川県内の元高校長という人もこんなことを言っている。

 「切り捨てるのは簡単だが、入ってきた子供を学校になじませ、教え育てるのも公立高の重要な役割。外見で合否を判断する基準が公立高にあっていいのか」と指摘する。

 上では揶揄するようなことを書いたけど、個人的には常識を知らしめるために明文化はなされるべきだし、その上で落とすならオーケーだし、外見で合否を判断する基準が公立高にあっていいと思うし、教育しやすい生徒だけを学校に入れ、あとは切るのは、高校のあり方として間違っていないと思う。
 なんていうと腹を立てる人もいるだろう。
 俺も言っていてややうんざりする。が、学校は社会適応するように規格化された人間を社会に送り出す機関なんである。それだけではないという意見を否定するわけではない。しかし「それだけではない」というのは、それが前提だということで、他はプラスアルファだということでもある。そして面接にはきちんとした格好で行きましょうということを教えるのも、きちんとした格好ができない人は入れてあげませんと宣言するのも、決してプラスアルファの部分ではない。
 そもそも「学校は勉強だけ教えていればいいのか」みたいな問題提起は、「勉強ができなくても気の良い奴はいくらでもいる。そいつらの良いところを伸ばしてやるのが教育だ」とパラフレーズできる。じゃあ伸ばすってなんだろう。それは良いところが認められやすくするということのはずだ。口の利き方や服装のTPOを知らないことが、ある人間の長所をどれだけ認めさせない要因になるか、人間がどれだけジャケ買いされるかを教えないで先送りしてしまうことが、良いところを伸ばすことにつながるとは、俺には思えない。
 高校が服装ルールを明確化すれば、中学校の指導も(担当の先生が熱意があれば*1)今よりは強気にできるだろうし、許される範囲の枠が思ったより狭いことを知れば、その枠を意識する生徒も出てくるだろうし、そいつらが親になったときには、子供にそのことを教えるだろう。そうすりゃ次の世代は今よりはすこし、こんな問題が減るんじゃないか? 楽観的な推測だけど。

*1:ってのは、進路指導の奴から「俺、よく知らない」の一言で「進路指導」終了って事例を聴いたことがあるから、高校の基準に興味がない教師ってのもいる可能性があるんだよね。