非実在青少年ってすげえネーミングだよね

 複数の友人と連日話題になったネタ。別段新しい知見とか、新情報とか深い考察とか威勢のいいアジテーションないんで、そういうの探している人は他を当たって頂戴な。カテゴリはあくまで「メモ」。主張じゃありません。先に言っておくけれどもブコメで批判されても返しません。誰かと議論するような準備ができていないので。
 では以下本文。
 以前の記事でこう書いた。

これに法規制が入るなんて寝言が出はじめたら、「自分、何やってるんだろう」と思いつつ反対する(はずだ)。

http://d.hatena.ne.jp/gkmond/20090626/p1

 一年足らずのあいだに本当に言わなきゃいけなくなるとは……。
漫画・アニメの「非実在青少年」も対象に 東京都の青少年育成条例改正案 (1/2)

 都の改正案のポイントは、「青少年の健全な育成」に対する考え方の拡大だ。改正案では、18歳未満の青少年が性的対象として扱われている書籍や映画などを「青少年性的視覚描写物」と定義。その上で、「青少年性的視覚描写物をまん延させることにより青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきでないこと」を都の責務だと規定している。

 現行条例が「不健全」性を「性的感情の刺激」「残虐性の助長」「自殺や犯罪の誘発」という比較的あいまいな表現で規定しているのに対し、改正案はこれに「青少年をみだりに性的対象として扱う風潮の助長」、つまり「青少年性的視覚描写物」という特定のジャンルの表現そのものを「不健全」なものとして追加、制限の対象に加えている。「青少年を性の対象にする」表現の抑止が改正案の狙いの1つだ。

 この基本スタンスから、創作作品の表現も条例の対象に含めたのが大きな点だ。改正案は、漫画やアニメなどの登場人物のうち、服装や所持品、学年、背景、音声などから「18歳未満として表現されていると認識されるもの」を「非実在青少年」という新語で定義する。

漫画・アニメの「非実在青少年」も対象に 東京都の青少年育成条例改正案 (1/2) - ITmedia NEWS

 当然反対する。反対理由は下の記事に書いてあることがよく整理されているんで、まずはリンク貼っておく。
「文化が滅びる」――都条例「非実在青少年」にちばてつやさん、永井豪さんら危機感
 相当出遅れたってか、まだほとんど情報収集していないので、テンションが上がってこないんだけれども、これとかパラパラ見た感じでは、なんだって潰せるんじゃねーの? と思われる。だってさ、「青少年の健全な育成の阻害」って、なんにでも適用できるでしょ。「都は、みだりに性的対象として扱われることにより心身に影響を受けた青少年に対し、その回復に資する支援のための措置を適切に講ずるものとする」ってところなんかは、具体的に何するかってことを含めてどんどん推進しなきゃいかんだろと思うし、去年の夏にうみねこ買いに某書店行ってショーボー(発音しか覚えてねーや)なる小学生専門雑誌やらDVDコーナーに並ぶ10歳以下のモデルの水着ものやらに腰が砕けそうになったから、んなもん流通させねえよってのは、良いと思うんだけども、非実在青少年なんて新概念作ってマンガだのゲームだの規制するのは、言葉を選んで言っても、まともな話には思われないし、狙った効果があるとも思えない。エロものはある程度流通量が減るかもしれないさ、確かにね。でもこの手の規制に賛成する人が望むことってのは、俺が勝手に思っているだけかもしれないが、子供でも女性でも男性でも良いが、それを理不尽な性的搾取対象にする奴の言動がまかり通っちゃう現状が消えることなんじゃないんだろうか。何しても無駄だってことが言いたいんじゃないし、ましてやエロメディアがなかったら性犯罪率が増えるとか言いたいわけじゃないんだけどさ、この条例ができたところで、最悪レベルにおける表現の自由的居直りは減らないと思うんだよね。小学生が連れ去られて保護されましたって事件がありゃあ「やられたのかどうか」とか「で、その子は可愛かったのか」とか「こんな子だったら逮捕のリスクも厭わない」とか、「そんな格好しているのが悪い」とか「少女だってわかってくれると思うんだ」とか「やられた方にも問題があった」とか、糞そのものな発言する奴はいなくならないんじゃないかと思う。人間性はアイテム取り上げても変わらないだろうからさ。個人的にはそんなこと言ってる奴も、それを表現の自由とか嘯いて居直ってる奴も、オナニーのフィニッシュと同時に心臓止まってこの上なく恥ずかしい死に様さらせと思う。規制を進めたい人も似たような気分(要するにそんな奴らいなくなれ)だと思うんだけどさ、この群れへの懲罰的方法として非実在青少年がどれくらい有効なのかなんてまるでわからないというか、俺はほとんど有効じゃないと思う。慌てて言っておけば、その手のジャンル愛好家がその群れとまったく重なりませんなんてメルヘンを抱いているんじゃなく、まったく逆で、群れのスケールがでかすぎるから懲罰直撃パーセンテージが低すぎると考えているわけ。俺的には、そんな薄い効果しか期待できないのに、行政が二次元ジャンルぶっつぶしに行くってのは、異常なことに思われるし、こんなん上手く行っちゃったら、あらゆる「良識派」の暴走が始まるんじゃないかと思う。エロマンガ潰れるいい気味だって笑ってるNANA読者とかアン・アン読者とか、速攻で波が来るだろうしさ、他のジャンルも危ない。まさかあって思うかもしれないけど「青少年の健全な育成」を拡大したって言っているんだよね、今回の改正案。また拡大しないなんてどうして言える? たとえば村上春樹なら、「ノルウェイの森」には13歳少女の初体験や非実在青少年がピアノ教師とレズる場面が出てくるし、「海辺のカフカ」には、14歳の少年がお姉さんに手で抜いてもらう場面がある。目立つエロメディアが全部潰れたら次にそれが狙われないとは限らない。
 この手の規制話が出てくる度に、反対する人たちの中には、表現の自由をヒステリックに掲げて、最低最悪なことを叫び散らす奴もいるのは知っているし、うんざりするし、そんな連中のことは軽蔑すりゃあ良いと思うけれども、その反面行政が出てきて規制しますよって言いだしたときには、たしかに、本当に、これは表現の自由の問題なんだよね。被害にあったことがある人や、まだ苦しんでいる人が実際にいるのに、そんなフレーズでガン無視ですかって言われて、それとこれとは別問題だと返すのは後ろめたさがあるんだけども、ここで縛られる表現の自由と、被害者の問題はトレードオフじゃない。そう見えるのは、後者の話が難しすぎるので、前者を解決策だと言い張るしかないからなんじゃないかという気がする。他に解決策が提示できないならいまある選択肢を試してみるしかないじゃないかと言いたくなる気持ちはわかる(すくなくともわかりたいとは思う)。コンテンツ産業にダメージがある可能性もなんて言われると、金儲けの前では個人の苦しみなんざ知らないよと言われている気がするんじゃないかとも思う。この論法、俺は嫌いだ。
 ただこの頭が働いているとは思えないこの改正で行政が手に取る武器は、そういう苦しんでいる人にコントロールの権利があるわけじゃないというところをもっと重く見るべきじゃないかと思う。
 そう考えるから、自分的にはもはやほとんど関心のない一部エロメディア規制については反対だと言わざるを得ない。ほんと、なに言ってんだろ自分とかなり首を傾げているけれども、それでも行政が出てくるのには、賛成できないのである。

 久々に長い文書いた。力尽きたので、見直さないでアップする。まとまりがないかもしれないが、以前何本か似たような記事を書いてからずっと、なんの結論も出ないまま、考え込んでいるので仕方ないんです。