斎藤愼爾[編] 現代詩殺人事件

現代詩殺人事件 (光文社文庫)
齋藤 愼爾

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光文社 2005-09-08
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 19の短編が収められた2005年刊行のアンソロジー。筭本邦雄の「冥府燦爛」(1969)と安部公房の「詩人の生涯」(1951)だけ読んだ。

銀木犀が死鑞色の花をびつしりとつけた。

「冥府燦爛」

ユーキッタン、ユーキッタンと、三十九歳の老婆は油ですきとおるように黒くなった糸車を、朝早くから夜ふけまで、ただでさえ短い睡眠をいっそう切りつめて、人間の皮をかぶった機械のように踏みつづける。

「詩人の生涯」

 なんとなく書き出しを引用してみたり。
 前者はレコード屋を入り口に冥土をちょっと覗きに行く話。後者は「ジャケツ」をメインモチーフに据えた寓話。読みたかったのは筭本作品だったが、面白かったのは安部作品。もし今安部公房がこの作品を書くなら、ラストにもう二三行、詩集がふたたび降り始めた雪の中に埋もれていくような場面を付け足したんじゃないかと思う。
 他の収録作品を読んだら、つけたしでなんか書くかも。