世田谷美術館（ウェブサイト）の企画展「福原信三と美術と資生堂」を見てきた。
リッチで、スマートで、モダンで
福原信三（1883-1948）は、資生堂創業者福原有信の三男として銀座に生まれました。幼少より絵画を好み、小学校時代、石井鼎湖について日本画を学び、その子息石井柏亭とも出会っています。鼎湖没後、日本画習得の機を失いますが、図画の教師であった小林万吾に水彩画、油彩画を学び、中学に入ると写真に興味を抱きました。中学卒業後、信三は父の勧めで薬学を学び、薬剤師の資格を取得し、米国へ4年間留学、この時、修行中の画家・川島理一郎と知り合いました。米国からの帰国の途、1年間ヨーロッパを巡り、日本人画家たちと交流し、美術館、博物館を訪れ、欧米の最も華やかな時代の芸術潮流と先進的な都市文化を目の当たりにして1913年に帰国しました。
パリ滞在中、信三は写真を自分の芸術表現として選び、資生堂を継いでからも、写真芸術社を起こし、『写真芸術』を発刊し、写真集５冊を出版、1919年に開設した資生堂ギャラリーで積極的に写真の展覧会も行いました。また、当時の日本のアマチュア写真家たちを代表する「日本写真会」の会長も務め、優れた写真家として日本の写真界に欠かせない存在となりました。一方、経営者としては、広告宣伝の重要性を欧米で認識し、1916年に意匠部を新設、さらに前述のとおり陳列場に始まる資生堂ギャラリーを開設、「リッチでスマートでモダン」という資生堂の企業イメージを打ち立て、企業文化の基盤を形成しました。
福原信三と美術の関わりは、写真家やひとりの美術愛好家という側面だけに留まりません。資生堂ギャラリーの運営および製品のパッケージや印刷物のデザインなどにも、彼と美術との結びつきが強く現れています。
本展は、大正から昭和へと時代のうねりの中で、生活の中にその時代に相応しい美しさと真の豊かさを求め続けた福原信三に焦点を当てて検証することにより、大正から昭和にかけての、文化人と美術との関係の１つのあり方を紹介し、その精神を引き継いだその後の企業の活動展開も織り交ぜながら、美術と生活そして社会との関わりを考察しようとするものです。
企画展 | 世田谷美術館 SETAGAYA ART MUSEUM
時間ぎりぎりに行ったので見きれなかったのだけど、壁に並べられた化粧品やポスターの群れはなかなか圧巻だった。特に印象に残ったのは、川島理一郎の水彩絵日記。江戸時代の絵の入った本みたいなレイアウトで書かれていて、見ていてとても楽しかった。絵が描けるとこんなもんも作れるのかって感じ。
また資生堂のデザインを生んだ山名文夫の作品も良かったっていうか、初めて名前を知った。
閉館ギリギリまで粘ったため、カタログも買う時間がなかったので、暇を見つけてもう一度でかけてみようと思う。
追記09/22：再訪。今回はゆっくり回れた。カタログも買った。生方誠の《真夏の光を浴びる人》《青いお姫様》ナターリア・ゴンチャローヴァの《スペイン女》梅原龍三郎《椿》須田國太郎《アーヴィラ》脇田和《祝祭日の鳥》向井良吉《ロマネスク》などの作品が印象に残った。広告系だと「オイデルミン」の1997年版が良かった。
