魚返善雄 漢文入門

漢文入門 (1966年) (現代教養文庫)
魚返 善雄

B000JA6S6Q
社会思想社 1966
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 古本屋でなんとなく購入して読んでみた。四十年前の漢文入門書。

この本は、漢文をまだすこしも学んでいない人にも、すでに相当に学んできた人にも、また専門家として漢文を教えている人にも、気楽におもしろく読んでいただきながら、初歩の読みかたから高級な理論までを身につけていただこうという、すこし欲ばった目標のもとに書かれました。

 ということで、漢文の読み方やら雑学やらエピソードやらをごたまぜにして、かつ二百ページちょっとでまとめてみた本。途中、蘇曼殊という作家の短い評伝なども載せられていて、なかなかに興味深かった。ちなみに蘇曼殊は日本人なのだが、幼い頃父が死に、母が中国人の妾となった関係から中国に育ち、「レ・ミゼラブル」の漢訳を「惨社会」の名で行った人らしい*1
 本書は前編と後編の二部構成になっているのだが、前編が16章であるのに対して、後編がわずか6章で、バランスが良くないと思ったら、読み終えた後に、筆者のご家族と思われる方の文章が載っていて、どうやらこの本が出る寸前に著者は亡くなっていたらしい。あるいはもっと長いものになるはずだったのかもしれない。

 ちなみに作者の名字は「おがえり」と読むらしい*2

*1:蘇曼殊 漂泊の詩僧によると、「翻案であるが、むしろパロディーあるいは創作と考えた方が妥当である。ここでは、慈悲深い司教までもが金銭欲に支配された俗物に書き換えられ、七回以降は原作を完全に逸脱しナポレオン三世を暗殺する革命党員の話となっている。これは、蘇曼殊の創作による政治小説である。」ということなので、翻訳というのは語弊があるかもしれない。

*2:http://homepage2.nifty.com/kanbun/books/ogaeri-kanbunnyumon.htm参照。