玉野和志 創価学会の研究

 第一パラグラフ、うちの家族と学会員の関わりに関するエピソードを枕にしたが、無駄なトラブルを呼ばないようにするために削除。
 創価学会について、俺個人は予備校時代にひとり、大学時代にたぶん2、3人、学会員の知り合いがいたが、ひとりどうしようもなくムカつくのがいた以外はその知人たちに含むところもなく、うわ怖っ! という体験もしていないものの、どうにも胡散臭いというイメージは拭えないでいる。あ、ちなみに学会だから胡散臭いっちゅーよりは、これを信じれば幸せになれます(orこれを信じないと不幸になります)系動員全般が胡散臭いと思っているので、あしからず。

 けれども、考えてみれば怪しい集団以上のイメージがなかったと、本屋で本書を見かけて思い、とりあえず読んでみた。

批判でもない
賞賛でもない
はじめての学会論!

 と帯にはある。ついでに「なぜ日本社会は学会を嫌うのか。」なんて言葉もあり、そこらへんに考察が及ぶことを期待していたんだけど、引用箇所はまあ妥当(はじめてじゃないよって突っ込みがよそのブログで入っていたけど)として、「なぜ〜」の方は、どこに答えがあったのかわからなかった。しかも書き方が批判する側にも学会側にも角が立たないようにしてますって感じの書き方だったもんだから、逆に胡散臭くって、わかったという印象も持てない。あとがきで凄く煮え切らないことを言っているんだけど、全編がその調子。
 ただ先行研究をあれこれ引用してくれていて、そこはなかなか面白かった。たとえば鶴見俊輔は、

創価学会は、戦前日本の軍隊、在郷軍人会、青年団、少年団、さらにそれらを最終的に一本に編みあげた大政翼賛運動の思想から多くのものをゆずり受けた。その共同体信仰。行動力。論争形式。それらは、敗戦直後、誰もゆずり受けて住もうとしない廃屋として、誰も利用しようとはしないがしかし依然として存在する国民的慣性としてそこにあった。その国民的遺産をそっくりそのまま、創価学会がゆずり受けたのである。

 と述べている。また梅原猛創価学会の思想を真・善・美というヨーロッパ哲学モデルから真を取り除き、利を加え、美・利・善と並べ直したものだとして以下のように言う。

学者は価値として真を求める。しかし民衆の腹はそれだけではいっこうにふくれぬではないか。この真の価値の否定は民衆の幸福と直接につながらない真理を追究している当時の日本の学問にたいする牧口の批判から生まれたものであろう

 それを梅原は一定程度評価しつつ、苦言も呈している。

創価学会ではしきりに空理空論にふける学者への攻撃がなされるが、利を尊ぶ創価学会は……あまりに近視眼的である……今後人類はあくまでも科学的な真理にもとづいて出来るだけ理性的に戦争をさけ、人類全体を平和と繁栄の方向に持って行くという方向をたどらねばならない以上、価値の座から真を引きおろした創価学会の価値学説は世界の指導原理として好ましくないものと云わねばなるまい。

 ただこの苦言もスケールを人類全体に広げたときには、という話なので、それが当時のマイノリティに対するセーフティネットとして使われることには、「好ましくない」と言っていないのかもしれない。

 学会の来し方行く末なんかよりも、なぜ嫌われるのかって話が知りたかったので、空振り感は否めない。それとも著者は何も書かないことで、理由なんてないと思わせたかったのか? うーん、よくわからない。

追記:読んでいるあいだ微妙に気になっていたのが、ところで著者は学会員だったりすんの? ということだった。つまりこれは研究と銘打った誘導だったりしないよなってことね。で、こちらの記事によると信者ではないとのこと。この手の本は著者の立場も大事かと思われるので、一応メモ。
 それから感想リンクを辿っていたら、学会員の人のブログに「となりの創価学会」って本を勧めているという記事が出ていた。求めているような考察はそっちに書かれていたりするんだろうか。
 ってか、ちょっと覗いてみようと思っただけなんだから、追いかける必要もあんまりないわけなんだけども。

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2013/08/25キンドル版が出ていたのでリンクしておく。

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