おとしばなし和唐内

 和唐内というのは近松門左衛門浄瑠璃「国姓爺合戦」の主人公。これを使って一幕喜劇みたいな体裁で書かれた作品。初出は昭和25(1950)年日本人と中国人のハーフである和唐内は作品の冒頭、日本で部下とともに退屈をもてあまし、金もない。そこで見せ物小屋みたいなものを始めてみるが、後発の商売敵の方に客を持って行かれてしまい、うまくいかない。腹が立ったので相手の小屋へ押しかけてみると、やっていたのは昔の知り合いで、みたいな流れ。後半の展開は、初出の時代を考えると朝鮮戦争なんかが念頭にあったのかもしれない。淡々とした筆の進みが、なかなかに効果をあげていると思った。元ネタを知っている人の方が楽しめるんだろうが、読んだことがない自分にもそれなりだったので、あまり系譜を気にする必要はないのかも。