猫アジを譲る

 猫の話ばかりしている気がするが、実は気のせいで猫をテーマにしたことなどはほとんどなかった。
 というのはどうでもいい話で、今日のこと。弟(既婚・家族で近所に住んでいる)がわが家に土産だとアジのひらきや鰯のはんぺんを持ってきてくれた。眼を輝かせたのはわが家で暮らす猫2匹。はんぺんはんぺんとはんぺんを食べ、人(俺)の食べるアジをガン見する。とくにはんぺん勝負で負けた(あんまり食べられなかった方は、もはや食い気に勝てずテーブルまで上ってきて、恨めしそうにこっちを見る。
 食べ終えた皿はそのまま床へ送り出され、ニャンコの皿へと変身。ガン見を続けた方の猫はアジの開きの頭にかぶりつく。
 そこではんぺん勝負に勝って良い気持ちで寛いでいた方が、「お、餌まだあるの?」と鳴く。頭にむしゃぶりついていた方の猫が食べるのを止め身構える。2匹が共同生活を始めたのは三月からで、いまだあまり近付くと喧嘩になる間柄なのだ。あたまにかぶりついていた方の猫は「来るなよ、来るなよ」という眼でもう片方を睨み付け、食べるどころではない。睨まれる方も「てめえいいもんもってんじゃねえか、ちょっとよこせよ」顔でガン見である。しかしさっきはんぺん勝負で負けている方がアジまでとられたら可哀想だと思った俺は、椅子を立ち、ちょっと話しかけてみた。「アジは食べさせてやれよ。おまえ、さっきいわしを散々食べただろ」
 驚いたことには言われた猫は「そういえばそうだったね」顔をして姿勢を寛ぎモードに戻した。そしてアジをハムハムしはじめたもう一方の猫が食べ終えた後、おもむろに皿まで行って残りを平らげたのだった。
 事実として提示するつもりは毛頭ないけれども、ある程度年のいっている動物は人の言葉がわかるような気がする*1

*1:だってそれが事実ってことになったら、動物虐待に利する屁理屈が簡単に作れるもんね。