いちごとせんべい

ゲゲゲの女房』が好きである。毎朝欠かさず見ている。特にいいのが水木しげるを演じている向井理だ。朴訥、ひょうひょう、でも一途というキャラクターをこれ以上なく演じきっている。この役者をこの役に当てようと思った人は天才だ。
 向井理の魅力はたぶん声なんだろうと思う。なんとも水気のある声なのだ。若者離れしていると言っていいかもしれない。『ほたるの光』の役だと台詞が若すぎて、魅力を引き出しきれてないような気さえする。脚本と声の相性も『ゲゲゲの女房』ではよかったんだろうと思う。松下奈緒も、あり得ない貧乏暮らしの中、「この人は本物の漫画家です」と父親に言い放ち、ひたすら夫のバックアップに勤めるっちゅー、俺などが見るとリアリティがないんでねーのかと思うほどできた奥さんをしっかり演じているとは思うが、やはり向井理なんである。
 その影響で、ここんとこ結構な量水木作品を読んでいた。銀座であった展示会も行った。原画になると、背景の点描が半端ない。呆けるように眺めてしまった。(その原画は『河童の三平』だったが、みんな同じことを思ったか、俺の行ったときには、物販コーナーでは『河童の三平』だけが売り切れていた。あれは本当に凄いわ。)
 今日ももちろん、ぴったんこかんかん(? 表記は未確認)の境港特集を食い入るように見た。奥さんの実家までカメラが入り、奥様のお父上が茂青年の食べっぷりを気に入って結婚を許したなんて話が披露されていた。なんとなくホクホクした。 

 そんな毎日夢中で見ているドラマに主演しているふたりが、ショートフィルムで競演していたよというのが、この「いちごとせんべい」および「割れたせんべい」だ。

公式サイト
 NHKの地デジPR作品らしいが、そんなことよりも重要なのは向井理松下奈緒が夫婦役で競演していることである。『ゲゲゲの女房』番外編ではないが、どうしても番外編に見えてしまう。今回の舞台は煎餅屋。向井理はそこの三代目。「俺たちの代でこの店に何ができるだろうか」と悩んでいる若旦那だ。松下奈緒演じる奥さんはその「俺たち」という単語によって、自分には煎餅屋の女房の自覚が足りなかったと急に反省して、あれこれ頭をひねる。半世紀の伝統を持つ煎餅屋に何を付け加えることができるのか。ヒントになるのが地デジの機能だった。なんてことのない話ではあるけれど、もはやふたりが並んでそこにいるだけでうれしいので、満喫した。

 続編の『割れた煎餅』はふたりが喧嘩したところから始まって、松下奈緒のお父さんが登場。スカイツリーの建設現場を観光しつつ、うまいこと仲直りに持っていく。松下奈緒が『ゲゲゲ』では見せたことのない怒りまくりの表情を見せるのが新鮮。『ゲゲゲ』では「はい」と「○○さん」ばっかり言っていて、一種人間離れしている松下奈緒が、ここではごく当たり前のキャラクターをごく当たり前に演じている。これまた良い感じだった。

 おまけ映像で撮影に使ったお店の人にサインしてあげている映像なんかもよかった。俺もサインが欲しい。「がんばってください」とか言ってみたい。結構嵌まった芸能人って、何人かいるけれども、サインが欲しいとか思ったのは初めてだ。こりゃあ「BECK」も見に行くべきか。
 なんてことを考えて夜更かしをすると、明日の『ゲゲゲの女房』を見逃すかもしれない。もう寝よう。そしてできたらハイビジョンで見よう。もうすぐ終わってしまうのが、いまからさびしくてならない。戌井さんにもハッピーエンドが待っているといいなあ。プロダクション立ち上げたパーティーでバナナ持ってやって来たシーンとか、『悪魔くん』放映のあとのシーンとか、今週の登場場面とか、戌井さんが絡んだシーンは良いシーンが多いんだよなあ。
 いかん。本当に寝よう。