スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ5『神様ヘルプ!』から第1期まとめまで


チェッカーズの音楽とその時代
の読書メモ第5回。
前回。
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今回、『神様ヘルプ!』からなんだけど、この曲、スージーさんに言わせると、「ネオGSとしてのチェッカーズ」を最も体現した曲らしい。

 今回は「パロディバンド」としてのチェッカーズを考えてみたい。「パロディバンド」と言ってしまうと、日本では「コミックバンド」のような響きを持ってしまうが、ここで言う「パロディバンド」とは「過去の音楽家や音楽スタイルを、批評的に模倣するバンド」という意味である。

 で『神様ヘルプ!』がパロディにしているのはグループサウンズだと。タイトルからザ・テンプターズの『神様お願い!』を連想すると。まあ、そりゃそうだね。ところで、『神様お願い!』って90年代にどっかのバンドがシングルにしてなかったっけ? 本書はKUWATA BANDの名前が出ていて、ウィキペディアにもいくつか名前が載っていたんだけど、どれもピンと来ない。なんて言ったっけなあ、あの人たち。そのバージョンでしか聴いたことがないから声は結構しっかり再生されるんだけど。
 まあいいや。『神様ヘルプ!』に話を戻すと、イントロ格好いいよね。パパパ、パパパ、パパパパ~~、ズズズズズズ、ジャジャーンみたいな流れが。でもって「ふたりシャナナでハートブレイク」のシャナナが今でもよくわからない。ところで、

最後に余談。フミヤの「おばさんパーマ」は、彼の「髪型史」の中で、私が最もかっこいいと思うものである(異論は認める)。

このおばちゃんパーマが
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これのことなら、割と頷いてしまう。あとドーム公演あたりの頭とだいぶあとのほうのウニみたいな頭も好きだったなあ。ソロになってからで印象強いのは天使の羽みたいな頭かなあ。センチュリー・カウントダウンのときの髪型もおばちゃんパーマ系だったけど、あれもかっこいいと思った。

 さて次は『OH! POPSTAR』。すごい珍しい曲だ。何がってスージーさんの感想が。

私の率直な感情を伝えれば「好き!」。少なくとも、ここまでのシングルの中では一番好きだ。

 オリコン連続一位を逃した曲だからか、すげえ素直に好きって言っててびっくりするじゃねえか。これは先にライブ映像見て「カッケー」ってなったんだけど、その印象が強かったからか、音源聴いたときに「遅い」って印象が先に立った。あと、観たライブ映像とキーも違っていたんじゃないかという気もする。なんか緑色と黒と狐の尻尾みたいなふわふわしたものの印象が残る衣裳だった。あの演奏はとってもよかった。しかしようやくスージーさんの言うことにうんうんと頷けて嬉しい。良い曲ですよ、これ。なんだけどさ、

「屋根裏の部屋」に2人で暮らしていた。そして自分(のちのポップスター)が「ギター弾ける仕事見つけた」までは良かったが、売れていく中で、彼女とは疎遠になっていく。シビれるのは、ポップスターに成り上がった自分が写っている街角のポスターを、その彼女がブーツの先で蹴って破るシーンだ。そして自分は歌う――「♪誰のために歌えばいいの?」

 つまりはこの歌詞、チェッカーズ自身の経験に基づいて書かれている「ような」感じで作られているのである。「ポップスターのメタ世界」という発明。この瞬間に、ここまでしつこく書いてきた「久留米のヤンキー性」と商業主義が、見事に融合するのである。

 の前半部は2番の歌詞冒頭「街角の壁に笑う俺のポスター見かけるたびにブーツの先で破って泣いたよ」を踏まえてるんだけど、ポスター破ったの、彼女だったの? おれは「俺」だと思ってた。で次の「星に手が届きそうな部屋でいつしか二人の愛も粉雪みたく川面に溶けたね」がカットバックで入ってくるイメージだった。ほかにそう言ってる人見当たらないから、おれの勘違いだったみたいなんだけど、一番で上昇気流なのに二番冒頭から自分のポスター蹴って泣いてる→内面に入って別れの場面みたいな流れの方が映像綺麗だと思うんだけどなあ。そして、最後の段落はすげえ余計だと思ったのだった、ちゃら~ん
 で、次がいまだにタイトルの意味がよくわからない『Song For U.S.A』。これは聴いてるうちに「フミヤいい声だなあ」って思ったのを覚えている曲。最初の五曲はメロディーとか音作りがキャッチーで気持ちよかったんだけど、これは声がいいと思った。同名の映画もあって深夜放送録画して見た。今となっては藤井尚之浅野温子のまわりをご機嫌なステップでまわるみたいな場面とマイルスってミュージシャンが交通事故で死んじゃう場面の「マイルス!」ってフミヤの叫び声しか覚えてないんだけどさ。
 で、スージーさん、ここで曲の解説全部放棄して(タイトルの由来解説を期待していたのに)ここまでのチェッカーズの総合的な功績についてまとめはじめる。2は自分たちの立ち位置に批評的だったと考えるならそうだねと思う。3もたぶんそうなんだろう。1のモダニズムの放棄ってどうなんだろうね。「日本人が作り、日本人が聴くことで完結する自給自足ポップスがチェッカーズにおいて完成したのである」なら、なんでその結果歌われるのが「♪This is the Song for U.S.A」になるのかまで書いてくれれば、膝を打ったかもしれない。

追記:読書メモ完結。全十三回。以下目次

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