2014年に読んで面白かった本

 今日段階でなんとなく面白かった印象の残っていたものをあげてみる。順番は読んだ順でしかない。あと、書いてから気がついたけど、去年出た本は一冊しかない。

高木彬光『一、二、三、――死』

一、二、三――死〜墨野隴人シリーズ2〜 光文社文庫
高木 彬光

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光文社 2006-07-13
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黄金の鍵(リンクはamazon)』から始まる墨野隴人シリーズの第2弾。犯人が誰だったかは覚えてるけど、内容はほとんど忘れてる。このシリーズっておれ的には、偏見をベースにしたロジックで真相にたどり着いちゃうので、絶賛できるようなもんではないという認識なんだけど、ラストに明かされる犯人の動機だけは大変なインパクトで、忘れることができなかった。

ベン・H・ウィンタース 上野元美訳『地上最後の刑事』

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ベン H ウィンタース Ben H. Winters 上野 元美

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早川書房 2013-12-06
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 もうすぐ隕石が落下してきて地球が滅ぼうってのに、なんだって殺人事件捜査なんてやってどうするって突っ込みをまわりから(おそらくは読者からも)受けつつ、主人公は捜査を続ける。んでもって、妹とその彼氏が困った奴でそっちのトラブルもなんとかしなきゃいけない、同僚はいきなり自殺した。みたいな話だったような気がする。三部作の第一弾で先日第二弾が出たらしい(まだ読んでないけど)。

ウラジミール・ナボコフ 富士川義之訳『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』

セバスチャン・ナイトの真実の生涯 (講談社文芸文庫)
ウラジミール・ナボコフ 富士川 義之

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講談社 1999-07-09
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 『ロリータ』で有名なナボコフが英語で書いた初めての長篇。亡くなった作家セバスチャン・ナイトの腹違いの弟が、兄の真実を求めて旅をするような話ではなかったか……。たしかほかの人物が書いた評伝が気にいらないかなんかして、それとは別の評伝を書こうとしていたんだったと思う(二回読んだはずなのに、何この頼りなさ)。セバスチャンはミステリーっぽい作品も書いており、ところどころそれが引用の形で呈示されたり、作品内のモチーフが現実レベルで照応を見たりしてた。冒頭の丸っこいものが連続で現れるところとかが好き。冒頭読んで愉しそうと思える人なら読んでも損しないんじゃないかな。

ビル・S・バリンジャー 大久保康雄訳『歯と爪』

歯と爪【新版】 (創元推理文庫)
ビル・S・バリンジャー 大久保 康雄

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東京創元社 2010-06-10
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 ラストが袋とじになっている見た目が印象的な本。十何年かぶりに再読して、「おお、すっかりあらすじなんか忘れていたけど、面白いじゃないか」と思ったのは覚えている。ラストもなんとかく覚えてるし、手品師が主人公だったのも覚えている。偽札作りのモチーフがあったのは今思い出した。ほんとうに忘れるのが早いな、おれ。

荻野富士夫『思想検事』
思想検事 (岩波新書)
荻野 富士夫

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岩波書店 2000-09-20
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 特高警察とともに危険思想の取締りをしていた思想検事(公安の前身)の素描。途中で裁判官がおれたちには思想問題よくわからないから、量刑とかむしろ検事に教えてもらいたいって言っていて、寒気が走った。十五年前だったらそんなに寒くなかったと思うんだけど。ちなみに共産主義者の取締り目的でできたこの部署は、共産党が壊滅状態になると、ほかのものを取り締まる必要が出てきたらしく、宗教とかに睨みを利かせ、戦争末期の取り締まり対象は「戦争に賛成しない者」くらいまで広がっていたそうである。

阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』
日本人はなぜ無宗教なのか (ちくま新書)
阿満 利麿

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筑摩書房 1996-10
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 たぶん出版時期から考えてオウム事件の派生本なんだと思うけど、無宗教という名の宗教について論じられた本。これ読むと創価バッシングとかって宗教の主導権争いなんだなという気がする。読んだ段階でいろいろ考えたのか、珍しく以下のような長めのメモを書いていた。

日本語の無宗教はノット創唱宗教程度の意味しかなく、自然宗教を含めれば、ほぼ全員が自然宗教信者であり、根本原理は「ほかのひとと違わないでいることが素晴らしい」という教えになる(から、たとえいいことであっても、まわりを見て珍しいようだとさっさと流してしまいたくなる)、くらいに頭の中でまとまった。もし、徒競走で順位付けを止めるとかのバックボーンがこれと言われたら頷いてしまいそう。割と正確な、とても醜い自画像を見せられた気分。そしてなかなか面白かった。

 渋谷区が公園封鎖って話が年末に出てて、ツイッターに「あの人たちを追い出すのは仕方ない。子どもを安心して遊ばせられないし」みたいなツイートが流れてきたときに、この本のことを思い出した。ってのは、そう言ってる人が東北の支援にはアクティブに活動してて「普通の人が普通の生活を取り戻せるよう、これからも尽力していきたい」みたいなことを書いていたから。時々耳にする「思いやりの心」とか「助け合いの精神」ってのは、こういう人にとっては、あくまでも「自分と同じ普通の人」に対してしか機能しないんだなあと思った。キリスト教批判で「何時の隣人を愛せという割に云々」という言い方があるけど、あれはキリスト教だからそうなるってわけでもないし、無宗教であっても似たようなことするんだねと、本とは関係なくうんざりした年末であったのも、本書のことを思い出したら連想で出てきてしまった。
 キンドル版も出ていた。確認時の価格は650円。
日本人はなぜ無宗教なのか (ちくま新書)
阿満利麿

B00FB3FX80
筑摩書房 1996-10-20
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織田作之助夫婦善哉

夫婦善哉 (講談社文芸文庫)
織田 作之助 種村 季弘

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講談社 1999-05-10
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 時々読みたく織田作之助。大抵は青空文庫で読める。妙なテンポがある文章なのではまる人ははまるんじゃないかな。収録作では「勧善懲悪(青空文庫)」が面白かったな。どの作品も出てくる人がたくましい。