チェスタトン南條竹則訳『木曜日だった男 一つの悪夢』

木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫 Aチ 1-1)
チェスタトン

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 これは面白い。amazonのレビューでは「おおげさにいえば「探偵とは何か」が哲学的に問われています。正統的な文学=哲学小説。」とか、「これを読んでいてしきりに思い出されたのが笠井潔氏の一連の矢吹駆シリーズでした。(草原推理文庫版)」とか書かれていて、それはそれで魅力的な紹介かとも思われるのだが、読んだ感想としてはいまいちズレているような気がする。だってこの小説、「深い」前に「愉快」なんだもん。サフラン・パークの夕暮れからのんびりと幕が明けて、ふたりの無政府主義者の詩人グレゴリーと法の詩人サイムがじゃれ合うような議論をするところ。グレゴリーが自分が本当の無政府主義者であることを明かすために、アジトにサイムを連れて行き、そこでサイムの秘密を知るところ。中盤以降の追跡劇。どこもかしこも読んでいてワクワクする。お話ってのはこうじゃなきゃいけないよなあ。
 俺が好きなのはサイムが秘密を明かしたところと、終盤の町中が敵に回ってしまうところだけど、他にも随所にサスペンスの盛り上げと、緊張の解放が仕掛けられていて、ダレるところがなかった。他のバージョンを読んでいないから他と較べてどうかは分からないのだけど、訳文も作品のノリを生かせている名訳だと思う。

 百年前にもうこんな素敵な作品があったんだなあ。

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2014/02/26追記:キンドル版が出ていた。確認時の価格は641円。

木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)
チェスタトン 南條 竹則

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