ビル プロンジーニ, バリー・N. マルツバーグ 内田 昌之 訳 嘲笑う闇夜

「裁くのは誰か?(感想)」の解説(小山正)でこんな風に紹介されていて、興味を持った。

田舎町ブラッドストーンに殺人鬼が徘徊し、三人の女性が惨殺される。しかし、捜査が進むにつれ、どうやら謎の犯人は殺人を犯している時、記憶を全く失っているらしいことが判明。犯人は誰か? なぜ殺戮を繰り返すのか? 全編「もしかしたら、自分が殺人鬼なのではないか?」と疑う四人のカットバックと、意味不明に切り張りされた新聞記事、意味深長な手紙、さらに殺人鬼の一人称が不気味に挿入される。小説的な技巧の限りをつくし、しかも意外な犯人の正体が明らかになる衝撃の結末までいっきに読ませる、緊迫のサイコ・サスペンスである。

 読了後にこの文を読み返すと微妙にズレたまとめになっているような気がしなくもないけれど、概ねこの通り。
わけありの男たちと女たちの視点が目まぐるしく切り替わりながら事件は進む。誰も(犯人自身も)誰がこの連続殺人を行っているのかわからない。不信だけが町を覆っていく。主要キャラはみな微妙におかしかったりとってもおかしかったりして、読者側から見るとひとりとして信頼できる人物がいない。連続殺人の被害者はいずれも女性だが死体にレイプされたあとはなく、ダイヤ形の傷を付けられているだけだ。ということでこちらは犯人候補から女性キャラも外すことができない。ので、「なんとなく犯人こいつ」って決め打ちして当たるか外れるかだけで読んでいったみた。外れた。くそう。
 訳文も「裁くのは誰か?」よりも個人的には読みやすく、先が気になって厚さにもめげずに読み進むことができた。翻訳は2002年で家の近所の本屋では姿を見なかったのだけど、犯人の見当のつかなさはかなりのものだし、途中作者が読者の予想に仕掛けてくる揺さぶりも上手で、なかなか面白いんじゃないかと思う。ただし、キモい人が出てくる話はちょっとって人は止めておいた方が良いけど。半分くらいはキモい人だったような気がする。
 それから一応折原一の解説も引用しておく。

『嘲笑う闇夜』は地味で堅実な出版社が、少部数で出して、一部のマニアが自分だけの宝物のように「こいつ、いいぜ」と、ひそひそ語り合うタイプのサスペンス小説だ。(中略)「B級の鑑」的小説だと思う。

 こう言われて興味を持った人向きなのかもしれない。そこまでマニア向けとも思わないけども。

嘲笑う闇夜 (文春文庫)
Bill Pronzini Barry N. Malzberg 内田 昌之

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文藝春秋 2002-05
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