エラリイ・クイーン 大庭忠男訳『九尾の猫』

九尾の猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-18)
エラリイ・クイーン 大庭 忠男

4150701180
早川書房 1978-07
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 十八年ぶりに再読した。ニューヨークで続く連続殺人事件をエラリイ・クイーンが追いかけるお話。最初に読んだのは大学のときで、後輩が「法月面白い」って言うから、勧められるままに『頼子のために(amazon)』(再読時の感想)から『ふたたび赤い悪夢(amazon)』(再読時の感想)まで読んだ(面白かった)。で、それらの作品の元ネタって感じでこの作品のことが言及されていたので買って読んだ。なんかこれを読むまえに『十日間の不思議(amazon)』を読んだほうがよくて、『十日間の不思議』はライツヴィルってシリーズの三作目でって話もあったんだけど、当時は面倒だったので、こっから入った(ために、初クイーンがこれだった)。当時の印象は別に面白くもつまらなくもないって感じだったんだけども、そのあと国名シリーズをなんとなく全部読んで、ライツヴィルシリーズも順番に読んでって、『十日間の不思議』が結構面白かったもんだから、次の作品である本書も、押入から出てきたのを幸い再読してみたわけである。ほとんど内容忘れてるし、覚えているものとて犯人くらいしかないしと。
 そうしたらさあ、クライマックスだと思ってたシーンがずいぶん早く出てくる。そんでもって、犯人間違えて覚えてたことが発覚した。つまり、何も覚えていないのと、全然変わらないっていうか、覚えてるつもりになってたものだから、結構びっくりしたりして、なかなか楽しかった。でもってストーリーも結構考えられているんだなあということがわかった。被害者が増えていくなかで関係者が捜査に首を突っ込んできたりして、飽きさせない。最初読んだときに面白くもつまらなくもないと思ったのは、法月の三作が面白かったのと、本作の訳文が淡泊すぎたせいだったようだ。近々新訳が出るって話だし、訳文変わったら抜群に面白いのかもしれないとちょっと期待してしまった。

 キンドル版もあって確認時の価格は550円。
九尾の猫
エラリイ クイーン 大庭 忠男

B00HK1PR8C
早川書房 2007-07-15
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 あんまり関係ないけど、このエントリーを書いていて『ふたたび赤い悪夢』の文庫が品切れになっているのを知った。キンドル版もなくてちょっとショック。犯人を覚えていない残念な脳味噌の言うことではあるけれど、あれは結構面白い作品だったんだよなあ。せめてキンドル版出ないかなあ。なんかのはずみに出てきたら再読しようと思う。前半の探偵法月がうじうじしてるところが最高だったというイメージだけが残ってるんだけど、内容はかけらもおぼえていないし。もしうじうじしてなかったらどうしよう……。

追記2016/01/19『ふたたび赤い悪夢』のキンドル版が出ていた。確認時の価格は926円。近々再読するつもり。
ふたたび赤い悪夢 (講談社文庫)
法月綸太郎

B017K33L6Y
講談社 1995-06-15
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追記2016/02/21読んだ→感想

追記2016/04/05新訳版を読んだ。
九尾の猫〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
エラリイ クイーン 越前 敏弥

B014F70OSQ
早川書房 2015-08-21
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 断然こっちのほうが読みやすいと思った。日本語の賞味期限切れとか、漢字が多いとか、カタカナの名前が覚えられないとか、翻訳読めないという話で出てくる理由はいくつもあるけれど、この話の旧訳新訳読み比べると、文と文のつながりが意識されているかどうかも大きいなあという気がした。ただ、さすがに大体の流れは覚えていたし今回は犯人も忘れていなかったので、「突然、抜群に面白くなりました!」的な感動はなかった。もうちょっと待ってから読むべきだったかもしれない。どっちかを選べと言うなら、こっちを選んだ方が読み通すのは楽だろうな、やっぱり。