法月綸太郎『頼子のために』

頼子のために (講談社文庫)
法月綸太郎

B00GY198DO
講談社 1993-05-15
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 以前『九尾の猫』の感想を書いたときに『ふたたび赤い悪夢』が絶版でショックとか言ってみたのだけど、その後キンドル版が出た。で、再読の準備としてまずは本書の読み返しをとさっきにこっちを買った(紙版は持っていたはずなのだが出てこなかった)。

「頼子が死んだ」。十七歳の愛娘を殺された父親は、通り魔事件で片づけようとする警察に疑念を抱き、ひそかに犯人をつきとめて相手を刺殺、自らは死を選ぶ―、という手記を残していた。手記を読んだ名探偵法月綸太郎が、事件の真相解明にのりだすと、やがて驚愕の展開が。精緻構成が冴える野心作。

 というお話。1997年に読んだ本なのでおおよそ二十年ぶり。犯人は覚えてた(というか、それ以外忘れていたので、手記から始まってびっくりした)。
 探偵法月綸太郎が事件に駆り出されるときの依頼人の思惑とか、手記のどこに引っかかったかとかは面白かった。
 逆に核心っぽく開示される部分で「おいおい、そりゃあまんますぎて謎になってねえよ」と思う部分があったりもした。初読時には驚いたのかもしれない。覚えてないんだからきっとそれなりに驚いたんだろう(「馬鹿じゃね?」と思ったときのほうが記憶に残る。某乱歩小作品とか動機だけは絶対忘れないもの)。読む年齢で引っかかるところが変わるんだなあと思った。
 そうそう、この本、舞台は80年代なんだけど、家のなかだけで暮らしている猫のことを「座敷猫」って表現してて、そんな言い方があったのかと思った。たぶん忘れてるだけで当時はあったんだろうね、外に出る前提がまだあったんだろう。
 さて、次は『ふたたび赤い悪夢』だ(じつは再読でこの事件のイメージがいささか変わったので、昔と同じように楽しめるのか、いささか不安があったりする)。
 ところで、よそさまで本作の感想など眺めてみると、「途中で真相がわかった」と書いていたりするんだが、いったい真相とはどの部分についての真相なんだろうかと首を傾げた。犯人がわかったならありそうだけど、「真相がわかった」は無理じゃないかなあ。