東山彰良『イッツ・オンリー・ロックンロール』

イッツ・オンリー・ロックンロール (光文社文庫)
東山 彰良

B0147Y1HK6
光文社 2010-02-20
売り上げランキング : 36755

Amazonで詳しく見る
by G-Toolsasin:B0147Y1HK6

おれは、博多に住む売れないロッカー、青木満三十四歳。安アパートで見果てぬ夢を抱きつつ、ギターの練習に明け暮れる毎日だ。そんな折、連続爆破事件の現場に遭遇。弾みで、バンドのCDが爆破犯の遺留品に紛れ込んでしまう。話題の犯人に影響を与えたカリスマバンドとして、一躍有名になったおれたち。だが、ある日やつらは突然やって来た…。ロック魂迸る快作。

『流(感想)』より面白かったらどうしようと思いつつ読んでいったが、題材がロックンロールで語り手が売れない30代バンドマンという設定から予想されるお話から、それほど逸脱したものではなかった、かな。ただ、フックになる展開が面白かった。ドラムのメンバーが農家で、その手伝いなんかをしてる場面もなかなか。農業はブルースらしい。「!」は『流』よりも多用されていた気がするが、スケールはあれほどではない。どっちが面白いかは人それぞれだろう。個人的には『流』の何が飛び出すかわからない感じのほうが好きだけど、これにはこれの素晴らしい高揚感がある。 
 本書を読んでいるあいだに、先日受けたアレルギー検査の結果を聞きに行った。
 そうしたらなんと、猫毛アレルギーであることが判明した。猫と三十年前後暮らしてて、猫撫でるのが何より好きな人間的には衝撃の結果だったのだが、つまりおれが猫かわいがりを猫に仕掛けるのはロックだったのだと、わけのわからない高揚感で乗り切った(註:このくだりは、本書を読んでいたおかげで落ち込まずに済んだという話がしたいのであって、アレルゲンに進んで近づくのは絶対お勧めしません。)。高揚感の赴くまま、友達に「この本面白いぜ!」ってメールしたら、高揚感が伝わったのか、「Amazonで買っちまったぜ!」と返事が来た。高揚感大事。