Agatha Christie『Murder at the Vicarage』

The Complete Miss Marple Collection (Miss Marple Mysteries)
Agatha Christie

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Witness Impulse 2013-11-26
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『牧師館の殺人』という名で邦訳もされている本書であるが、上にリンクを張ったキンドル版は、ミス・マープルの長編も短編も全部入って575円(確認時)というなぜかわからないスーパープライス(ちなみに単体だと400円する(確認時))で、毎週BSプレミアムのドラマ版を楽しく見ている身としては買わない理由が見当たらなかったので、こっちで読むことにしたってなことを書こうとして、日本語版を確認したら、ぼくのイメージしていたバージョンはもはやなく、表紙と訳者を変えた新バージョンになっていた。クリスティー文庫とか銘打ったわりに統一感があったのは一瞬だったと改めて感じた次第。
 で、内容はといえば、タイトルの通り牧師館で発生した殺人事件の成り行きを牧師の一人称で追っていく話で、ミス・マープルの第一長編。殺害時刻の問題とか、銃声の問題とか、ドラマ版の内容が犯人以外吹っ飛んでいたので、いろいろ面白かった。
 読了後は、そのまま次のThe Body in the Libraryに入っているのだけど、同じ村の出来事(発表時期は10年以上違うらしい)を扱っているので、出てくるおばちゃんたちが同じメンツで、なんとなく親しみを持ちつつ二作目を眺めることができている。まとまってくれている効果だなあと思った。

 なんだけども、読んでいて一箇所とても不思議なところがあって、ある人物がこんな供述をする場面。

I went up to him-touched him. He was dead. Then I looked down and saw the pistol lying on the floor beside him.

 このあとまだ供述は続くのだが、それは端折って、その人物への質問。

I would like to ask just one or two questions. First, did you touch or move the body in any way?

 なんかおかしいぞ、と思いつつ質問されたほうの答えを見ると、

No, I didn't touch it at all.

 おまえ、さっき触ったって言ってたじゃないか! ここ、日本語ではどう処理されているんだろかと思ったところで、そういえばこれの紙バージョンが本棚の奥で眠っていたなと思い出し、引っ張り出して該当箇所を確認してみた。

I went up to him. I saw that he was dead. Then I looked down and saw the pistol lying on the floor beside him.(太字は引用者)

なんの問題もなくなってやんの。見ると手元の紙版は章立てがChapter○○(←「○」には算用数字)となっていて、合本版はただ英単語で数字が書いてあるだけ(目次で見るとChapter + 英語表記で数字になっている)だったりするので、使用した底本が古いとか、いろいろ事情があるのかもしれない。まあ、ただ読む分には些細な話なんだけど(おれも「作者は引用1から引用2へ行く途中で食事をしたかトイレいに行ったか風呂に入ったかしたのだろう」と思ったくらいでそのまま進んだし、特にそれで問題はなかった)。