犬墓島―迷犬ルパン・スペシャル (光文社文庫)
辻 真先
光文社 1984-10
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Amazonで詳しく見る by G-ToolsISBN:4334700489
スペシャルと銘打つだけあって本作はオールスター。朝日刑事がルパンとランに連れられて乗り込んでいった犬墓島で起こる怪事件。解決に乗り出すのはいつものデコボココンビ、のみならず、ポテトとスーパーそれに克郎、瓜生慎と真由子、蟻巣の近江ママともうもうファンにはたまらない豪華絢爛なキャスティング。でありながら、それだけに止まらず、タイトルから丸わかりなように、本作は横溝正史作品のパロディでもあり、さらにはこんな祭り企画でありながら、なぜか辻真先独特の救いのない終わり方も備え、それでいて全部でたった213ページしかないという、匠の粋を味わえる傑作だ。
あ、あと『ブーゲンビリアは死の香り(感想)』にも出てきた井崎総三も出てる。
予告編チックに引用するならこの一文。
薩次は苦笑した。
「それはそうでしょう。今回にかぎってスーパーが、実はぼくらの敵側についていたんですから」
ファン限定ではあるけれども、これは素晴らしいですよ。いやあ面白かった!
ただ、釈然としないのはユノキプロがエノキプロで通されているところとか、克郎のルビが「かつお」になっているところで、辻作品の名詞は結構揺れる。たとえばルパンシリーズの刑事朝日正義は第一作では「あさひせいぎ」なのだけれども、時々「あさひまさよし」とルビを振られているし、トラベルライター瓜生慎も『合本・青春殺人事件(感想)』では「はにゅうしん」とルビを振られていた。作者が忙しくて校正刷りに目を通していない気がするのだが、実際何が原因で名称が揺れるのかは分からない。
2013/06/13追記 キンドル版が出ていた。確認時の価格は420円。
犬 墓 島〜迷犬ルパン・スペシャル〜 (光文社文庫)
辻 真先
光文社 2005-09-01
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