廣野由美子『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)
廣野 由美子

4121017900
中央公論新社 2005-03
売り上げランキング : 14800

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by G-Toolsisbn:4121017900
「批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義」を読んだ。ジョナサン・カラーの本とか講談社選書メチエの奴とか文学理論の入門書は色々出ていて、それぞれ似たようなことが書いてある。本書の特色はあれこれの理論を使ってみせる作品を「フランケンシュタイン」一本に絞ったところだろう。そのため、作品のどうとでも読めるさ加減が明確になっている。その点以外に独創性は感じられなかったもののコンパクトにまとまった良い本。
 文化批評のところで、フランケンシュタイン映画の系譜が語られている。ユニヴァーサル社がフランケンシュタインの怪物と自社の怪物を競演させていたらしいのだが、その競演相手はドラキュラと狼男だったそうだ。もしユニヴァーサルの契約モンスターが違う種類だったならば、怪物くんの召使いは誰になったのかと、ちと気になった*1
 あと俺はオリジナルを読んでいなかったので、フランケンシュタインの怪物がペラペラ喋れることに驚いた。舞台や映画に移しかえられるに従って、フランケンシュタインの怪物は言葉を奪われたらしい。自分が知っているのは、日本に来た映画を藤子不二雄Aが怪物くんの中で定着させたイメージなので、当然「フンガー」しか喋れないと思いこんでいた。
追記:なんとなくウィキペディアで調べてみたら、「フランケンシュタイン」の翻訳は戦後になるまで出ていないことが分かった。なんとなく意外だった。
 さらに意外だったのは真顔でモデルという項目が立っているところ。書かれている内容は「フランケンシュタインの日記」に基づいていると思われる。ムーな情報がしれっと書かれていることにビックリ。あり得ないって。

追記2015/11/16
キンドル版が出ていた。確認時の価格は723円。
批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)
廣野由美子

B00LMB0N5S
中央公論新社 2005-03-25
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*1:本書への不満の最たるものは、せっかくフランケンシュタインに話題を絞ったにも関わらず、日本での受容とイメージの変容に一切触れていないことで、これなら日本人によって書かれる必要がまるでない気がした。情報量の違いから英語圏の人が同じ企画を立てたら、必ず本書より優れたものになるだろうと思う。