『死ぬほど愛した…』

死ぬほど愛した…―トラベル・ミステリー (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
辻 真先

408610654X
集英社 1984-04
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by G-Toolsisbn:408610654X
 中央公論社以前のユーカリおばさん作品。短編集。発表先はおもに「COBALT」。70代のヒロインで、死ぬのはみんなおばあちゃん。コバルト的にありなのか? これ。イラストもまったく可愛くないんですが……。
 発表されたのは一番早い「遠くで死にたい」で82年。翌年、辻真先は第13回池内詳三文学奨励賞をユーカリおばさんシリーズの「孤独の人」「吝嗇の人」で受賞している*1。後者は本書に収録されている。
 東伊豆海岸で人形作りのアトリエを営んでいるユーカリおばさん。出身は長野で当年取って七十四歳。娘の名前はさおりでインテリア・デザイナー。孫はくるみ。高校時代からのボーイフレンドの新哉とあちこちでかけては事件に遭遇している。
 ユーカリおばさんにはかつて結城辰己(ゆうきたつみ)という恋人がいたが、彼は日中戦争のとき、招集されるのを拒んで伊豆の城ヶ崎で投身自殺した。その後結婚し娘をもうけるも夫と死別。現在はかつての恋人の墓守をするつもりでアトリエに引きこもっている。
 というような設定がプロローグで語られる。旦那の扱い可哀想すぎ。
「遠くで死にたい」に書かれている福来友吉記念館ってまだあるんだね。行ってみたいな。ネタかマジかはどうでもいいんだけど。
 で本書にはボーナストラックめいた作品が入っている。「特急『燕』驀進す」である。ポテトとスーパーがタイムスリップし、若き日のユーカリおばさんや那珂一兵と一緒に特急「燕」に乗るという話である。初出は「旅」83年4月号。原稿を依頼したのは当時同誌の編集者だった折原一だと「犯人」の解説で本人が言っていた。読めて良かった。
 ところで当時のコバルトシリーズのラインナップをパラパラ見ていたら、小説ハレンチ学園の著者が永井豪なんだけど、本人書いたのかなあ。そしてなぜか川端康成鈴木健二が収録されていてビックリした。
 この本を読んで知ったこと:80年代初頭。埼玉はダサいからという理由で一部から南栃木県と呼ばれていたんだって。

*1:ということはまだ前があるということだ。