君、君タラズトモ、臣ハ臣ナリの出典

「現人神の創作者たち(amazon)」より吉川幸次郎の文章の孫引き(なぜかどこから引っ張ってきたのか書かれていなかった。以下、引用はちくま文庫版pp.176-178)。

「君君たらずとも臣は臣たらざるべからず」、君主がどんな乱暴をしても、ばかであっても、臣下は臣下としての忠節を尽くさなければならない。同様に「父父たらずとも子子たらざるべからず」、父がどんなに乱暴でありばかであっても、子供に対する愛情がなくても、子供は至上命令として父に対する愛情をもたねばならない、そういうふうな理解が、儒学的なもの、あるいは『論語』的なものとして、あるのであります。(中略)このことばとして現れるような思想は、思想として、中国では乏しいように感ぜられるのであります。(中略)これは日本ではよく耳にしますが、一たい中国のことばとしてあるのかどうか、これは日本で発生した言葉ではないか(中略)しかしとうとう、これは中国の書物の中で見つかりました。(中略)『孝経』の注釈の一つに、『古文孝経孔子伝』という書物があります。(中略)その本の序文にこのことばが見つかりました。

 中略だらけなのは、まともに引用するとやたらに長いからで、気になる人は本文に当たって欲しいが、この『古文孝経孔子伝』という本は、随代に偽作された書物で中国では早く消滅し、のちものち十七世紀になって、太宰春台という日本の学者が復刻して、中国へ逆輸入のかたちで持ち込まれたものだったらしい。中国では顧みられなかった本が、日本では金科玉条とされていたことに、二国間の考え方の違いや儒教需要におけるズレを吉川も著者の山本も読み取っているようだ。ちなみにこの記事は別にそれについてどうこう言おうと思ったのではなくて、単純になんかに使えるかもというだけのメモである。ついでにこれが気になってググった人への情報になればもっけの幸いである。

 と、書いたら「もっけ」という検索ワードでやって来る人が結構多くてびっくり。これの意味を捜しているのだろうかと調べてみると「もっけ」とは「物の怪」のことらしいということでへえ。んで同名タイトルのアニメがあるようで、だからかと腑に落ちた。(この段落だけ追記)