中島敦 虎狩・風と光と夢

中島敦全集〈1〉 (ちくま文庫)
中島 敦

4480027513
筑摩書房 1993-01
売り上げランキング : 78468
おすすめ平均 star

Amazonで詳しく見る
by G-Toolsasin:4480027513

 展覧会に行くことになったので、転がっていた文庫本全集を手に取る。収録作品は「狐憑青空文庫)」「木乃伊」「山月記青空文庫)」「文字禍(青空文庫)」「斗南先生(青空文庫)」「虎狩(青空文庫)」「光と風と夢(青空文庫)」「下田の女」「ある生活」「喧嘩」「蕨・竹・老人」「巡査の居る風景」「D市七月叙景(一)」「歌稿」「漢詩」「訳詞」
 このうち、「下田の女」から後ろは習作。前うっちゃったときには斗南先生まで読んでいたので、今回は「虎狩」と「風と光と夢」を読んでみた。前者は日本統治下の挑戦を舞台にした作品で、朝鮮人の友人と出かける虎狩のエピソードがつづられる。後者は「ジキル博士とハイド氏」や「新アラビア夜話(感想)」のスティーブンスンの晩年を描いた作品。両方に共通しているのは、植民地主義への違和感だろうか。しかしそれは戦後に語られることになるであろう善悪二元論的な処理なのではなく、「被害者」の方も決して無垢には描かれない。「虎狩」に現れる朝鮮人の友人も決して単純な善人などではなく、ぞっとするような行為を行ったりしているのは、この作者に幻滅しないですみ、良かった。ただ「風と光と夢」だけを読むなら、植民地支配全般ではなくて、白人の横暴への違和感と取れないこともないし、発表された年代を考えると、当時はそういうものとして受け取られたのかもしれない←適当なことを言っております。

 これに古潭としてまとめられた連作四編をまとめて眺めてみると、作者のイメージである中国ものは「山月記」一編に止まる。これが意外な発見だった。
とは、本書解説の酒見賢一の受け売り。
 しかしまとめて読むと、面白さよりも、独特の堅苦しさが先に立つように感じられる。特に「風と光と夢」の方では、遊びが少なくて、ちょっと自分の趣味には合わなかった。