「風の歌を聴け」の選評

ソース:http://www.tokyo-kurenaidan.com/haruki-gunzo.htm
 さっきピンボールを引用したら、なんとなくどことなくな流れで、「風の歌を聴け」が群像新人賞を獲ったときの選評に辿り着いた。以下、一部を孫引き
佐多稲子:「風の歌を聴け」を二度読んだ。はじめのとき、たのしかった、という読後感があり、どういうふうにたのしかったのかを、もいちどたしかめようとしてである。二度目のときも同じようにたのしかった。それなら説明はいらない、という感想になった。
島尾敏雄:実は今何が書いてあったのか思い出せないのだが、筋の展開も登場人物の行動や会話もアメリカのどこかの町の出来事(否それを描いたような小説)のようであった。
吉行淳之介:「風の歌を聴け」は、あえて点数で言ってみれば、六十点の作品か八十五点(九十点といってもいい)の作品か、どうもよく分らないので再読した。
 なんて正直な審査員かと思う。
 で、選評を見ると、丸谷才一が尽力して受賞に至ったのではないかと思われる。
 引用を始めたときは「わからない」な選考委員が多くてウケる〜と、思ったんだけど、よく考えてみたら、「分からないけど新しいんじゃないかな、よし一丁それに賭けてみよう」と票を投じているわけだから、残りの四人も大したもんだったのかもしれない。実際、「風の歌を聴け」を単体で見せられたら、なにがなんだか分からないと思うし。吉行淳之介

「鼠」という少年は、結局は主人公(作者)の分身であろうが、ほぼ他人として書かれているところにも、その手腕が分る。

 ってコメントがふたりがダブルであるという読み方の初出だったのかなあ。