米澤穂信 秋期限定栗きんとん事件

 俺的待ちに待った本。「春季限定いちごタルト事件(感想)」はそこまでではなかったのだが、第二弾の「夏期限定トロピカルパフェ」事件にひっくりかえり「おんもしれええええ!」と読了。以来いつ出るかいつ出るかと首を長くして待っていたシリーズ第三弾。
 新たに投入されるキャラクターで注目は新聞部の瓜野。小鳩くんが目立たないことで回りと折り合いをつけようとするキャラであるのに対して、そのカウンターみたいな存在として登場する。こいつが友人の氷谷から教えられた地元で起きている連続放火事件を追いかけるのが一本のラインとして語られていく。瓜野はこの事件を使って、自分の名前を全校に知らしめようという野望を抱き、懸命に頭を絞る。

三つの現場に何か法則性がなかったか、おれは必死に考える。考えて考えて、それでも何も浮かばなかったら、そのときは氷谷に無駄足を詫びよう。
 ビニールハウスの隣の空き地。
 狭い公園のごみ箱。一戸建ての間の資材置き場。

 どうも後半は小市民小鳩とW探偵の競争へと転がっていくのではないかという雰囲気がある(地の文の語りも小鳩と瓜野が交互に担当しているし)。瓜野は小鳩より一学年下で、結果本作では第二世代っぽい感じ。小鳩にハッパをかける健吾は今回、瓜野に対して父親的役割を担っている。これがなんとも格好良い。瓜野の守護者として生徒指導の教員とのあいだに立ちはだかる一方で、瓜野の暴走には歯止めをかける。先輩かくあるべしってか、こんな先輩どこにいるんだっつーくらいの風格で、どうしても頭の中で高校生になってくれなかった。
 前作の続きである以上、下手なこと書くと前作までのネタバレになるので、大丈夫そうな所だけで感想を述べても良さそうなところを二カ所箇条書きにしておく。
・瓜野はレシートで残念だった。
・小鳩はバスの中でもっとちゃんとお喋りした方が良いと思う。

 とりあえずここまでは面白い。下巻が楽しみだ。

090320追記:下巻を読み終えた。緊迫感のある場面がいくつも用意されていて面白かった。あるキャラクターの言う、一言で済ませられることを言うために、どれだけ言葉を積み重ねなければならないのかという言葉は、まさに本書そのものを表しているではないかと思った。そしてその場面が非常に良かった。個人的には小鳩は嫌いなタイプで、もうちょっとどうにかならないのかという気もするわけだが、それでもこのシリーズは面白い。春期夏期秋期と来たので次の冬期でお終いかと思うと寂しい(しかし早く読みたい)。

 ネタバレにならない感想。小山内さんが何するか考えているときの作者はどれくらい萌え狂っているのかが気になる。あと最後の一行がある意味衝撃。それからやっぱり体温が上がるのは大事だよね、と。

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
米澤 穂信

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