ボクシングWBCトリプル世界タイトルマッチ

 震災の影響で急遽会場を神戸ワールド記念ホールに移しつつ8000人の客が入ったのだとか。
カードは、

スーパーフェザー級
粟生隆寛帝拳)対 同級3位ウンベルト・グティエレス(メキシコ)
スーパーバンタム級
西岡利晃帝拳)対 同級6位マウリシオ・ムニョス(アルゼンチン)
フェザー級
長谷川穂積(真正)対 同級1位ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)

 テレビ放映は粟生と西岡の試合が逆だった。

 西岡の試合で挑戦者陣営が「がんばろう日本」Tシャツを着ていたりして、時節柄を反映していると思った。試合内容は時節柄関係なくスリリングで面白かった。西岡はチャンピオンになってから試合が面白い。短期政権を予想したのだが、二年経って6度防衛でうち5回がKO勝ち。王座に就いたときには、信じられなかった娘さんの言葉ににこにこするパパ的インタビューも、もはや恒例行事だ。ムニョスもタフで強気でいい選手だなあという印象だった。

 粟生の相手グティエレスは、元暫定王者の肩書きを持つ22歳。強そうだったけれども、計量でリミットをオーバーして、頭髪を剃り上げてなんとかパスということで、コンディションが残念だったようだ。それを差し引いても、ボディーブロー一発で決めたのは凄かった。粟生はスウェイバックの動きがかっこいいな、とか、このベルトって本望がバレロ相手に獲りにいったベルトだよねとか、そんなことを思いだしつつ眺めていた。

 で、長谷川。打たれずに打つスタイルに戻すと言っていたので、それならなんとかなるんじゃないかと思ったが、蓋を開けてみると、やっぱり前回のどつきあいスタイルから抜けきれていないように見えた。ゴンサレスもバンタムから上がってきた選手だったのに、明らかに長谷川のほうが小さかったので、その辺も心理的に影響があったのかも知れない。というのは素人判断で、3ラウンドまでは長谷川がポイントでリードしていたそうである。ボクシングを見るのも難しい。
 いずれにせよ、4ラウンドに一発食って、顎が折れても立っていたチャンピオンは崩れ落ちた。執念で立ち上がったけれども、足下が定まらず、レフェリーが試合を止めた。
 バンタム時代の抜群の強さがイメージにあるせいか、フェザーに上げてからの2試合は、どちらもらしくない試合に感じられた(それでテストマッチなしで飛び級してベルト獲ったんだから、凄まじい話だけど)。らしくない試合で敗戦したのを見たせいか、自分にしては珍しく、まだやって欲しいなという気持ちが残った。本人がこのままじゃ終われないと思うか、それとももうモチベーションが持てないと思うかどちらに転ぶかはわからないけれども。
 個人的にはフェザー級でのスタイルを発見できれば、まだいけると思うんだけどな。ボクサーが引退する敗戦って、独特な重たい雰囲気のなかで試合が終わるように感じる。蓄積披露が流れ出してるんだと言われたら思わず信じちゃいそうな。そういう雰囲気は今日の長谷川からは感じなかった。……って書いたところまでは本気だったが、畑山がロルシーに負けたときもそんな重さは感じなかったぞ、そう言えば。当てにならねえな、こんなもん。
 シンプルに言い直そう。もう一試合でいい。これが長谷川穂積だっていう試合が見たい。