完全言語の探求 (平凡社ライブラリー)
ウンベルト・エーコ 上村 忠男
平凡社 2011-12-10
売り上げランキング : 97389
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たまには背伸びした読書をしようと思って読み出し、やっと読み終わった。はじめて読了したエーコ本。内容はこんな感じ。
ヨーロッパ各地で、現代の国民語のもとになった俗語が擡頭しはじめた時代、バベル以前、多言語状態以前の単一の祖語「アダムの言語」への復帰、あるいは〈完全言語〉の再建への探求が始まる。そこに投入される、さまざまな理説、我々にも親しい哲学者や思想家を含む多彩な人々の情熱、百科全書や、コンピュータ言語、またエスペラントなどにも行きつくその多様な道筋を、練達の筆で見事にさばき描き切るエーコの傑作思想史!
で、本文が500ページを超えるので、内容の要約は手に余る(ついでにいえば、内容がどれくらい頭に残っているかという点に不安もある)から、例によって目次でも引用しておこうと思う。出版元がふした「緒言」、エーコによる「序」のあとこんな流れになってる。
- 第一章 アダムから「言語の混乱」へ
- 第二章 カバラ-の汎記号論
- トーラーの読解 宇宙的結合術と名前のカバラー 祖語
- 第三章 ダンテの完全言語
- 第四章 ライムンドゥス・ルルスの「大いなる術」
- 結合術の基本原理 アルファベットと四つの図形 「知識の樹」 ニコラウス・クサヌスにおける普遍的一致
- 第五章 単一起源仮説と複数の祖語
- 第六章 近代文化におけるカバラー主義とルルス主義
- 第七章 像からなる完全言語
- 第八章 魔術的言語
- いくつかの仮説 ジョン・ディーの魔術的言語 完全性と秘密性
- 第九章 ポリグラフィー
- 第十章 アプリオリな哲学言語
- 第十一章 ジョージ・ダルガーノ
- 第十二章 ジョン・ウィルキンズ 図表と文法 即物的記号 辞書――同義語、迂言法、隠喩、開かれた分類? 分類の限界 ウィルキンズのハイパーテクスト
- 第十三章 フランシス・ロドウィック
- 第十四章 ライプニッツから『百科全書』へ
- 記号法と計算 原始概念の問題 百科事典と思考のアルファベット 盲目の思考 『易教』と二進法的記数法 副産物 ライプニッツの「図書館」と『百科全書』
- 第十五章 啓蒙主義から今日にいたるまでの哲学的言語
- 十八世紀のさまざまな計画案 哲学的言語の晩期 宇宙での言語活動 人工知能 完全言語の亡霊たち
- 第十六章 国際的補助言語
- 混合的な諸体系 アポステリオリな言語のバベル エスペラント 最適化された文法 いくつかの理論的な異議とそれらへの反論 国際的補助言語の「政治的」可能性 国際的補助言語の限界と表現能力
- 第十七章 結論
- バベルの再評価 翻訳 アダムへの賜物
で、訳者あとがき(親本のもの、平凡社ライブラリー版のもの)がふたつと、文献一覧、索引で全部。読み出した段階でエントリーを立てて、目次を書いておき、読みながら記事を追加していけばよかったんじゃないかなと今になって思った。
冒頭で書いたように背伸びした読書だったので、各章の各節でパノラマめいて展開する記述についていくのが精いっぱいだったわけだけども、それはそれとしてなかなか面白い話がたくさんあって、読後感はすこぶるよかった(背伸びしすぎたふくらはぎは明らかにつりそうではあるけれど)。タイトルや目次に並ぶ語句を見て、惹かれるものがあれば読んで損はないんじゃなかろうか。
なお「序」にあるように、本書が考察する対象は
- ヘブライ語、エジプト語、中国語のように、歴史上存在した言語のうちで原初的な言語であると見なされるか、または神秘的なしかたで完全言語であるというように見なされた言語の再発見の試み。
- インド=ヨーロッパ語がそうであったように実験工房用のモデルもふくめて、理論上の要請から原初的なものとして設定された言語、または多少とも架空性をおびた祖語の復元の試み。
- 人工的に構築された言語。
に限定されているので、読みたいものが違う場合にはご注意を。
完全言語の探求 (平凡社ライブラリー)
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