kiki あたし彼女

 第三回日本ケータイ小説大賞受賞作。知り合いが「読め」というから読んだ。400頁を越えると表示されているのでかなりしんどい気分で1頁目をクリックしたら、なんと一行が最大で10文字ちょっと。これならいけんじゃねとがんばってみる。ケータイ小説は読んだことがなくて、昔痛いニュースに「女子高生が援交してそのあとホストと付き合い、ホストは病気で死ぬが本人は頑張って生きていくと終わる」とかパターン分析されていたのでそういうものか、じゃあこいつが死ぬのね、みたいに読んでいたのだが、死ななかったので良かった。キャラを殺して「感動するでしょ」とやられるのは、あまり好きではない。主人公はテンションが上げるだけ上げたあと、ちょっとしたことで今度はどん底まで下がる。男が謝るとまたテンションが上がるだけ上がる。実に忙しい。相手の男は三十過ぎた設定なのに、割と深刻な気分の心内文に「もぉ」とか出てきて、いまの世の中はそうなのかと浦島太郎な気分を味わった。6章までで終わっていても別に問題はないような気がした。秋元康激賞という話で、コメントは「言葉のリアリティーがすごい。こんな小説は読んだことがない」だそう。現代の口語が取り入れられているような気がするところに反応したのだろう。作詞家としては正しい反応なのかもしれない。やってることは演歌のノリというか大黒摩季の「あなただけ見つめてる」とかそういう懐かしい曲の雰囲気を感じる。言葉にはリアリティーがあるのかもしれないが、キャラクターの行動、特に男の行動(なぜに独白がNANAのポエムみたいなのかも含めて、は自分には理解できなかった。実話に基づいているとあとがきにあったので、作者的にはすべてがひとつの話なんだろうが、6章までと7章以下は切り離してふたつの話にしてしまった方が収まりが良かったように思った。ラストのエピソードは今のままだと蛇足に近いが、これが中心であれば、なかなか面白い切り口だと思う。使い方がもったいない。で、結局この作品に対してどんな感想を抱いたのかということなんだけれども、お話として全体を見ると正直ピンとこなかった。なんかぼんやりしている。ちょっと残念だ。

あたし彼女」はこちらで読めます。
http://nkst.jp/vote2/novel.php?auther=20080001

 追記:上の感想を書いてから、瀬戸内寂聴の書いたケータイ小説あしたの虹」を覗いてみた。

第1章 初めての経験
1 トオル


ヒカルが初めての彼ではなかった。

中2の時、それは終わっていた。

同じ演劇部の3年のトオル

いつでも軽いのり。

みんなを笑わせてばかりいた。

中学出たらお笑い芸人のおじさんにしこまれて、お笑いのスターをめざすと決めていた。

 これはこれで異様な気がする。

追記2:わずか数日でパロディが出たり*1するのを見て、やっぱりインパクトはあるんだなあと思っていたら、なんと現代語訳まで出た。もはや古典。しかも現代語訳がいかにも現代語訳で上手かった。これでいつでも教科書に載せられる。もちろん嘘だけど。