飯城勇三『エラリー・クイーン論』

エラリー・クイーン論
飯城 勇三

4846010570
論創社 2010-09
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 あんまりにもストレートなタイトルに惹かれて買った本。五年も経ってやっと読了。とりあえず目次。

目次

  • 本書の読者へ
  • 第一部 女王の戴冠 エラリー・クイーン
    • 序章  女王の起源――クイーン作品の目指したものについて考察する
    • 第一章 女王の挑戦――クイーン作品の〈読者への挑戦〉について考察する
    • 第二章 女王の動機――クイーン作品の〈犯人の物語〉について考察する
    • 第三章 女王の策略――クイーン作品のトリックについて考察する
    • 第四章 女王の話術――クイーン作品の叙述について考察する
    • 第五章 女王の論理――クイーン作品のロジックについて考察する
    • 第六章 女王の伝言――クイーン作品のダイイング・メッセージについて考察する
  • 第二部 女王の棺『ギリシア棺の謎』論
    • 第七章 棺の中の失楽――『ギリシア棺の謎』はメタミステリ?
    • 第八章 ギリシア・リフレイン――ギリシアの棺はいかに修繕されたか?
    • 第九章 三つめの棺――ギリシアの棺は黄昏に開かれるか?
  • ミニエッセイ 女王の休息
  • あとがき

 読了までに時間がかかったのは、本書がつまらなかったからでも難解だったからでもなく、三冊(『九尾の猫(感想)』『Xの悲劇』『ローマ帽子の謎』)しか読んでなかったため。第一部を読み終えた時点で、「こりゃあ面白い」と思いつつ、かなりネタバレに論じていることが明らかだったので、やっぱりクイーンを多少は読んでから戻ってきたほうがより楽しめるだろうと。第一部では、クイーンはクリスティーやカーのような「意外な真相」を描く作家ではなく、「意外な推理」をこそ描こうとしていたという話が語られていて、三冊しか読んでなかったうえに、楽しみ方がイマイチわかっていなかったおれは、「ほお、そういうところに注目して読むと楽しめるのか」と指針を与えられた気になって、国名シリーズやらライツヴィルやらを読み出したのだった。論じているものを読む気にさせるのだから、面白い論に決まっているわけで、角川文庫がこの著者を新訳のシリーズ解説者に据えたのは英断っつーか、おれなんかは、解説読みたさで全部買い直そうかと思うくらいのものなのである。
 もちろん、そんだけ面白い論なので、実際にクイーンを読んでみると、本書の紹介の方が面白くね? って、話もいくつかあったし、メインで語られてる『ギリシア棺』も旧創元版で読んだときには、だるすぎて死ねるとか思ったのだが、本書の論を読み終えたばかりの今は、別のバージョンで再読しようと思ってる。それくらい乗せられるし、いっそ架空の評論だと思って、読んじゃっても相当楽しめるんじゃないかという気もする(著者は絶対に喜ばないと思うけど)。
 ミステリーの一般論でもなくて、海外ミステリーの、それも作家ひとりだけを取り上げている体裁が、どうしても敷居を高くしそうな気はするけど、おそらく読んで損のない一冊だろうと、個人的には思う。特に一部は再読だった今回もしっかり気分が盛り上がった。またそのうち読み返すつもり。

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