エラリー・クイーン 越前敏弥訳『レーン最後の事件』

レーン最後の事件 (角川文庫)
エラリー・クイーン 越前 敏弥

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 うっわー、面白かった。
 本書は『Xの悲劇(Amazon)』から始まるレーン四部作の最後を飾る作品。半年くらいまえに『Zの悲劇』を読んだ(感想)あと、買って本棚の肥やしにしていたのだった。いや、最後で面白くなるのはわかってるんだけど、そこへ至るまでが長いんだよね、クイーンて(個人の感想です)。でも四部作と言われているのに、最後の一冊だけ未読のままというのは、たとえ犯人が誰かだけ知っていたとしても据わりが悪いってことで読むことにしたんだけども、こんなに面白いとはまったく予想していなかった。

私立探偵サム元警視を訪れた奇妙な七色の髭の男。何百万ドルもの価値がある秘密に繋がる手がかりの入った封筒を預かってほしいというその依頼が、一同をかつてない悲劇へと導いていく。消えた警備員の謎、シェイクスピアの貴重な稀覯本すりかえ事件、不審な愛書家、そしてサムの美貌の娘ペイシェンスに危機が迫る時、元俳優のレーンの推理は…?!いよいよクライマックスを迎えるドルリー・レーン四部作、新訳完結編。

 あらすじはこんな感じ。七色の髪の男はサム元警視に封筒を預かって欲しいと依頼し、決められた日程で生存確認の電話をするから、もし電話がなかったらなかを検めるようにと言い残して去って行く。そのあと人捜しの依頼を受けて警備員の足取りを追うべく、彼の勤め先ブリタニック博物館(シリーズ探偵のドルリー・レーンはこの博物館の役員をしていてサムに便宜をはかり、のちには捜査に協力する)へ向かったサムは見学者の集団が行きと帰りで人数が違ったという話を聞いたりするうち、シェイクスピア稀覯本のすりかえ事件とぶつかり、警備員はその盗人を追いかけていったんではないかというふうに展開していくんだけど、この稀覯本のすり替え事件あたりからギアが上がっていく。持ち去られた稀覯本の代わりに事件発覚を遅らせるべく置いて行かれたのは、もっと価値の高いさらなる稀覯本だったのである。おまけに盗まれた本が返送されてきたりしていったいどうなっているのよと。そっからあとはもうずっとね、「えーそうなんのかー」ばっかりで、「これ、ほんとにクイーン作品なんだろか、途中経過が面白すぎるぞ」と何度考えたことか。だれるところが全然なくて先が気になって仕方ないというジャンル関係なしに面白いお話の条件が見事にクリアされた話の展開だった。

 四部作の最後とかそういうのを無視しても大当たりの一冊だった。そのうち再読しようと思う。

 なお、訳者あとがきには、

 この完結編について言えば、ドルリー・レーン氏が過去に解決した三つの大事件をひとつ残らず読んでいないと、その魅力は半分も味わえないだろう。

 とあるので、一応シリーズの前三作にもリンクしておく*1

Xの悲劇 (角川文庫)
エラリー・クイーン 越前 敏弥

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Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)
エラリー・クイーン 越前 敏弥

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Zの悲劇 (角川文庫)
エラリー・クイーン 越前 敏弥

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角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-25
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*1:個人的にはウィキペディアか何かで設定だけ抑えておけば充分楽しめるような気もするのだけど、まあ全部読んだほうが味わい深いのは間違いない。ただ、X〜Zのどれかで挫折した場合は、さっさと本作を読むべきだと思う。このシリーズで本作だけ先が気になる度合いが突出しているので、ほかのを放り出した人でもこれならいけると思うのである。