2016年に読んで印象に残った本

#2016年に読んだ面白い本を晒しあうというタグをツイッターで見かけて、おれもやってみよと入力してったらあっけなく文字数制限超えたので、ブログで記事にすることにした。以下読んだ順。画像をクリックするとAmazonの紹介ページに飛びます。


 シリーズ全部読む(さらに高木彬光のシリーズものいくつか読んでおく)のが前提だけど、びっくりした。逆に単体で読んだらさすがにもったいないかも。

  • James Anderson『The Never-Open Desert Diner』


 トラック運転手の主人公が風を避けるために空き家の裏手に回り込み、そこで立ち小便。ふと上方を見あげると、空き屋の窓からこっちを見ている女性がいて、視線がかち合う。で、慌てて逃げた主人公、あとで謝りに行き、人気がないもんだから窓からなかを覗いてみたら、さっきの女が素っ裸でチェロを弾いている! いったいなんだこれ! こんな出会いから始まるボーイ・ミーツ・ガールストーリー初めて読んだ。読んだの一月なんだけど、まだ印象は鮮烈である。早いとこ翻訳されないものだろうか(もうされてたりして)。

流 (講談社文庫)
東山彰良

B073VDVRPB
講談社 2017-07-14
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 芥川賞が大注目された回の直木賞受賞作品。破壊力ばっちりのオープニングばかり感想では紹介したんだけども、ヒロインほか出てくるキャラクターたちやエピソードがとても心地良く、いまとなってはその心地良さのほうが強く残っている。


 文体の感触以外はどんどん忘れていき、そのせいで逆に「あれは面白かったなあ」感が強まった。感想で触れた『オペレーション・ノア』は簡単に挫折し、再挑戦予定なしだけど、そのうちほかの作品に触れてみたい。


 チェーホフ・ミーツ・熊本弁! 


 まさか読み終わるとは思わなかった大長編。途中までは何が面白いのかわからないけど止められないという感じで読み進む。何度も「ここにはすべてが書いてあるのではないだろうか」などと思った。ビジネス書に書いてあるようなこととほとんど同じフレーズとか出てきてびっくり、みたいな。古典新訳と岩波でも全訳が刊行中だけど、そう何度もこれを読むぞって勢いのある時期が来るとは思えないので、現時点では唯一完結していて新刊で手に入るこのバージョンを推したい。個人的には訳も肌に合っていた。そういえば2周目の四巻を読了したところで止まっていたんだった。そのうち再開しよう。


 よく調べたなあと感心した本。感想エントリーはあげていないけど「印象に残った」という基準でいったらやっぱり外せない、今年の話題書。このあと類書が何冊か出たけど、一冊読むならやっぱりこれなんじゃないかと思う。

  • 小田雅久仁『本にだって雄と雌があります』(感想


 すっとぼけた出だしが合えば、最後まできゃっきゃうふふといけること請け合い。本読むために徹夜したのは久しぶりだった。思い出すと再読したくなるね。


 紙をPDFにしようと思ったところで抜けがあるのに気がつき、抜けた巻を揃えたので全部読み直した。朝日新聞に連載されていた四コマ漫画。サラリーマンが結婚して子供が生まれってな日常を描いてるだけと言えばだけなんだけど、犬のガタピシはじめ、キャラがいい味出してて、今読んでも面白いなあと思ったのだった。


 辞書かってくらい分厚い本で、そのなかで延々と密室を解いたり密室を解いたりしていた。面白かったかと言われるともにょってしまうのだけども、「印象に残った」という基準で考えると外せなかった。パッションに圧倒された。

  • 宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』


『スペース金融道(Amazon)』とどっちを取りあげるか迷ったんだけど、こっちに収録されている「ムイシュキンの脳髄」が好きなのと、Amazon紹介ページに「202X年の世界的人気作家、最新作!」とあったので、こちらをリストアップしてみた。『スペース金融道』のように前面に押し出されてはいないんだけども、ところどころ真面目な顔してしょうもないギャグを入れるみたいな書き方のされているところがあって、そういうところばかり印象に残ってたりする。
追記2017/03/04 第38回吉川英治文学新人賞を受賞していた(PFD)。気に入っている作品なのでこっちまで嬉しい。


 面白かったかと言われるとことに前半は微妙だったんだけども、いろは歌に関しては素直に「すげえ」と思い、最後に出てきたアレは簡単には消えないインパクトを残していった。いい意味で作者が楽しんで書いてるのが伝わってくるという点では今年いちばんだった。


 クイーンの途中経過がこんなに面白くていいのかという驚き。ザッツ・エンターテインメント! とわくわくしながらひたすらページをめくった。読み終わって大満足。今年のしめくくりにふさわしい一冊にめぐりあえてよかったとほくほくした。

 ところが、まだ今年は終わっていなかった。


 これがあったのである。興奮しまくりの感想はリンク先を読んでもらいたいのだが、ほんとこれには痺れまくった。

 1年振り返ってもかすかにオリンピックの馬鹿騒ぎとイチロー3000本安打があったくらいで、あとはひたすら憂鬱だったり悲しかったりするニュースの多かった今年ですが、本について言えば、かなりの当たり年だった気がします。せめてもの救いでしょうか。