都筑道夫『七十五羽の烏』

七十五羽の烏〜都筑道夫コレクション〈本格推理篇〉〜 (光文社文庫)
都筑 道夫

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光文社 2003-03-20
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 表題作の長編とそれ以外の短篇が6本入った作品集。表題作がつまらなかったというわけではもちろんないのだけど、こりゃあ面白いと思ったのはキリオン・スレイものの短篇「溶けたナイフ」(「人間の指で人間が刺し殺せるか」という冒頭の提示で身を乗り出した)、退職刑事ものの「写真うつりのよい女」(ブリーフ一枚で殺されていた女をめぐる安楽椅子探偵物語)、なめくじ長屋ものの「二百年の仇討」(二百年前に自分を殺した相手への仇討ちだと主張する女が出てくる)だった。どれも始まってすぐ、おおこれどうなるの? と思わせてくれて、ああ、都筑道夫好きだって人がいるのもわかるなあと思った。
 なかでも「写真うつりのよい女」は印象深かった。正直、読み終えた直後はそれほどでもなかったんだけど、あとから段々「すげえ」ってほうに感想が動いていった。
 これまで、都筑道夫って文章に「、」が多すぎて苦手だなあと思っていたんだけども、こんなに魅力的な謎を提示してくれるんだったら、ほかのも読んでみたいなあという気になった。