野坂昭如『マリリン・モンロー・ノー・リターン』

マリリン・モンロー・ノー・リターン―野坂昭如ルネサンス〈3〉 (岩波現代文庫)
野坂 昭如

4006021143
岩波書店 2007-07-18
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 発売されたときに、タイトルに打ち抜かれて購入。だったんだけど、高校生の時分に読もうと試みた『エロ事師たち』が読めないってレベルで合わなかったため、本棚に置いて背表紙眺めるだけで満足していたのだが、昨年著者が亡くなったのを機に1冊くらい読んでみるかとページをめくってみた。内容は

徹底的に現実を拒否しおぞましい妄想にとりつかれた人間を主人公として、遠国の美女への願望、女たちの執念、反逆的なヒューマニズムや現実逃避をテーマとする中編小説集。作家自身の「私小説」である表題作「マリリン・モンロー・ノー・リターン」をはじめ、性と死を執拗に直視した問題作である「娼婦三代」「母陰呪縛譚」「死の器」「不能の姦」を収録。

 こんな感じ。中編小説集と書いてはあるものの、長編小説のプロットぽい印象も受けた。それでいて表題作を除けばどれも「長すぎる」とも思ったので、内容的にはまったく合わなかったと言うのが正直なところ。魅力は助詞を適度に省略した文体だった。高校生の時分には「読めない」って思った文体が、おっさんになった今は清々しいとさえ思えるこの不思議。そんな場面はひとつも出てこないのに、何度か浴衣で水を被ったあと風を受けているようなイメージが浮かんだ。まとわりつきつつべたべたしてないような独特な語りだった。内容が趣味に合っていたらどはまりしたかもしれないなあ。
 家にはもう1冊、タイトルに惚れて買った『オペレーション・ノア』というのも転がっているので、そのうち気が向いたら読んでみよう。